責任の所在
どんな組織であっても、役割を明確にする必要はある。
しかし、役割を明確にすればするほど、責任の所在もはっきりする。上手くいかなかったときには、当然、批判の矛先が向けられる。
「責任の所在が明確になり、批判の矛先が自分に向かうことを恐れないのですか?」
そんな質問をぶつけられると、日本バスケットボール協会(JBA)強化委員長の伊藤拓摩は、迷いなくこう言い切った。
「僕の考えは逆です」
説明はこう続いた。
「役割を明確にした方が責任の所在も明瞭化されますし、なぜ上手くいかなかったかを、より多くの人に感じてもらう方が、組織全体として成長していくと思っているので。そもそも……失敗などないと僕は思っています」
「失敗はない」とは、一体どういうことか。
「正しい目標を立て、そこに向かっていけば、その先にあるのは失敗ではなく、『改善』だと考えているので。だからこそ役割を明確にしなければいけないです。そうなればより多くの人がアドバイザーというか、アドバイスをする人になります。もちろん、ときには批判をする人も出てくるでしょう。ただ、そこから良い意見も出てくると思いますから」
そんな伊藤の考え方は、近年の日本のスポーツ界では少し異例だ。目的や目標が曖昧な組織は多い。
先のサッカーW杯の後、多くのファンがモヤモヤした感想を抱え、ときに怒りを覚えたのは、日本サッカー協会が目標を曖昧にし、そこに伴うはずの責任も曖昧にしていると感じたからだろう。
Bリーグの長崎ヴェルカの代表取締役社長兼GMを務めながら、2025年秋にJBA強化委員長、そして男子代表ダイレクターに就任した伊藤。一見シンプルな「失敗はない、改善があるだけ」という言葉の裏には、この1年足らずでJBAの中に築いてきた、地味だが手堅い組織改革の積み重ねがある。













