頑張ることやチームワークは目的ではない

当然ながら代表チームの目標は試合での勝利で、頑張ることやチームワークはそのための手段だ。

だが日本人選手や指導者にありがちな思考のクセとして、目的や目標を曖昧なままにしてしまうことがある。いつの間にか、頑張ることやチームワークそのものが目的になってしまうのもそのせいだ。

馬場雄大選手(左)とジョシュ・ホーキンソン選手(右) 写真/石田壮一
馬場雄大選手(左)とジョシュ・ホーキンソン選手(右) 写真/石田壮一

伊藤はそうした危険性を繰り返し指摘している。

「失敗はない、改善があるだけ」という考え方は、それらとは対極にある。個人やチームの目的意識だけでなく、組織そのものの目的やルールを、どこまで具体的に言語化できているか。伊藤がJBAで取り組んできたのは、まさにその作業だった。

伊藤が就任後、まず着手したのは強化委員会の構造改革だった。

強化委員会の前に似たような組織として存在した技術委員会は、その時々のトピックが出て、それをみんなで話し合うという運営だったという。

男子・女子の代表強化部会、育成年代を担うアンダーカテゴリー部会、指導者を育てるエリートコーチ養成部会……。JBAにはもともと複数の部会が存在したが、伊藤はそれぞれの部会長に、より明確な目標設定と権限、そして責任を持たせる方向へと舵を切った。

「部会で、達成する目的を明確にし、その達成目標のためにどういうふうに進めているのかを全員で共有し、進捗を報告する形になりました。アンダーカテゴリー男子の場合は(強豪として知られる福岡第一高校の)井手口孝先生が強化部会長となって、革新的な取り組みをどんどんやっていただいています。それは井手口先生がしっかりと責任を持って、担っていただいているから。会社と一緒ですよね。各部長がいて、その部長がその部をしっかりまとめるっていう考え方かなと」

目標が曖昧なまま「なんとなく話し合う」組織から、「誰が」「何を」「どこまで」やるのかがわかる組織へ。KPI(重要業績評価指標)を各部会に持たせたのも健全な組織にするためだった。

「その部として達成すべきもの、いわゆるミッションバリューじゃないですけど、KPIもハッキリさせました」

写真/石田壮一
写真/石田壮一

日本のスポーツ現場では、ときに目標や達成基準をあえて曖昧にしておくことで、誰も明確な責任を負わずに済ませてしまう、という構造がしばしば見られる。それらとは真逆の、健全な構造を伊藤は作ろうとしている。