「選択的夫婦別姓制度」の意味
明治民法の〈夫権的家父長制〉を引き継いでいる「氏」によって夫婦や親子がひとまとまりにされる戸籍。
戸籍によって男性が優位に立つ構造が作られてきたということを理解すると、実は現在、主として現実的な不便さの観点から議論されている「選択的夫婦別姓」の問題は、家族における〈夫権的家父長制〉を解消することに関わる重大な問題だということがわかります。
そして現在の家父長制構造がどのようにつくられるかを見るために、まず婚姻関係の成立に関する手続きについて考えてみましょう。
現行民法では、まず第739条で「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と規定し(法律婚)、その行為を、戸籍法第16条②では「戸籍に入る」と表現しています(入籍)。
そして、民法第750条では「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とした上で、戸籍法第74条で、婚姻に際して「夫婦が称する氏」を届け出ることが定められています(夫婦同姓)。
そして戸籍法第16条により「婚姻の届出があったときは、夫婦について新戸籍を編製する」とされています。しかしそこで、夫婦のうち氏を継続する者が戸籍の筆頭者だった場合は、氏を変更する者が筆頭者である者の「戸籍に入る」とされているのです。
さらに氏名の記載順として、戸籍法第14条で「夫婦が、夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻」が先に記載されると規定しています。
これらを明治民法の規定と比較してみると、現行民法に基づき新しく定められた夫婦関係を形成するための手続きが、明治民法によるものとあまり変わっていないことがわかります(明治民法と現行民法及び戸籍法との比較の表参照)。
つまり現行の戸籍制度は、①「法律婚」、②「入籍」、③「夫婦同姓」、④⑤「戸主」類似の「戸籍筆頭者」の優先という内容になっています。
これを見ると、選択という要素はありながら、明治民法に規定されていた「家制度」における婚姻の手続きの形が、ほぼそのまま引き継がれているといえるでしょう。
実際、現行法の規定における「氏」を「家」に置き換えて解釈すると、ほぼ明治民法の規定で示された内容と重なるのです。
婚姻関係をこのような手続きにより形成する過程で、夫婦のどちらかが自分の「姓」を奪われることになります。
そして現在は、それを強いられるのはほとんどが女性であるという状況があります。
また、現行の戸籍には、家族の戸籍を代表する者として、戸籍の始めに「戸籍筆頭者」の名が書かれています。これは明治民法における「戸主」とは異なり法律に特に定めはなく、権限もないとされています。
しかし、多くはそもそも婚姻時に「氏」を持ち続けることになった夫の名が、古い戸籍において父系を示す「前戸主」の書かれていた欄に、「戸主」然として書かれることで、その家族の代表であり、男系が重要であるというイメージをつくりだすことになっているのです。












