相続が発生しても、市場に流通しない
この千代田区Bマンションは、新築時の価格帯が7480万円から1億8190万円でしたが、12年後の今は約2.3倍※1もの価格水準まで上昇しています。中古マンションとしての相場価格を見ると、72.08㎡の住戸(7階)で坪単価899万円とされており、すぐ近隣の2025年築新築Aマンションの坪単価907万円※1とほぼ変わらない水準にまで達しています。
この1棟だけで都心の中古市場全体の状況を断定することはできませんが、中古マンションの価格もかなり上昇しており、自著『マンション高騰の真実』で明らかにしたとおり、短期転売率と住宅価格上昇率には統計的に正の相関があることをふまえると、中古マンションの市場でも「住む人」ではなく転売・資産保有・資産退避といった目的の「住まない買い手」へと主役が変わり、短期転売が繰り返されることで価格が上昇している可能性が高いと言えます。
売買だけでなく、相続が発生した住戸を見てみると、千代田区Bマンションでは、約12年間で相続が8戸発生していました。ところが、相続後の所有権移転の状況を見ると、売却されたのは1戸もなく、相続人の住所がこのマンションとなっているのは3戸だけで、残る5戸は他の場所になっていました。
ここで重要なのは、「相続が増えれば中古流通も増えるはずだ」という見方が、都心や利便性の高いエリアのマンションでは成り立たない可能性があることです。戸建ての空き家問題では、相続後に市場へ出ることもなく、空き家として滞留する現象がよく知られています。マンションでも、相続が発生した後も空室のまま長期間置いておく、あるいは賃貸にまわすケースが多く、中古市場に出てくる住戸数は思ったほど増えない可能性があります。
また、このマンションでは、台湾に住所を置く所有者の住戸でも相続が発生していました。また、所有権が移転した相続人の住所も台湾でした。今後、外国居住者による所有が増えれば、「所有は続くが空室状態が続く」「相続発生後に連絡がとれなくなる」といった住戸が増えることも考えられます。これは管理組合の運営や連絡体制、災害時対応に影響しかねません。
この現象は東京だけではありませんでした。
大阪市西区Dマンションでは、約8年間に8戸の中古売買がありましたが、そのすべてが非居住の個人または法人への売却でした。もともと自己居住用として購入された住戸も含め、中古として売り出された物件のうち、自らが住むことを目的とした買い手に渡ったものは見事に一戸もなかったのです。また、このマンションも台湾に住所を置く非居住の個人への売却が見られました。
一方で、大阪市西区Dマンションでは、千代田区Bマンションほど法人の短期転売が前面に出ているわけではありませんでした。それでも、新築時4290万円~6140万円だった住戸が、中古相場では約1.5倍※1、坪単価330万円※2まで上昇しています。
ここでも、中古市場は「住む人」の購入や住み替えのための市場から、「住まない買い手」が価格形成に大きな影響を及ぼす市場へと変わっている可能性が高いのです。
※1出典:「住まいサーフィン」ウェブサイト(2025年12月時点)
※2出典:「マンションレビュー」ウェブサイト(2025年12月時点)













