「正解」のない子育てで尊重しているもの
とはいえ、長年にわたって第一線で活動してきた歌手が、自らの表現活動よりも子育てに比重を置くことは、決して簡単な選択ではない。
持田さんは「子どもにとっては重たいかも」と笑いながら、子育てを優先させようと考えるに至った理由を教えてくれた。
「私自身が40歳をすぎてから授かることができたこともあるかもしれませんが、出産した直後は、『3年は仕事をしない』という気持ちでいました。実際には仕事をしていたのですが(笑)。
今、私は子どもと一緒にいる時間を長く取れています。そうしようと思った理由のひとつは、保育施設に預けて働かなければ生活が成り立たない人もいるので、その人たちが優先されるべきだと感じたことです。
もうひとつは、子育てで生じるあらゆる感情を受け止めたいと思ったことです。やはり子育ては人間と人間の対峙なので、ずっとニコニコしていられるわけではありません。能面みたいな顔をしてしまっているときも、きっとあると思います。でも、子育てでは、『愛しい』だけではない、『つらい』『たいへんだ』という感情もまた、すべて味わいたいと思ったんです」
日頃の持田さんは、どのように子どもと向き合っているのか。
「子どもに『教える』ことは常に戸惑いがありますよね。私自身が未熟な中、手探りで育てている状態です。本当に教えたことが正しいのか、自分のときと時代も環境も違う中で、『正解』すらないのかもしれません。ひとりの人間として尊重して育てていくことが、私にできることなのだと思います。
その上で、たとえば極力ウソをつかないことや、『ごめんね』がちゃんと言えることの大切さを伝えられたら素敵だなと思います。年齢が進んでいけば、ずる賢さを覚えることもあるでしょう。それは成長なのかもしれません。もしかしたら、私のなかにそうした部分があるのかもしれないと、自分の姿勢を見直す機会にもなっています」
子どもと大人が思う大切なものは異なる。そんな差異すら、持田さんは楽しんで子どもと一緒に歩んでいるようだ。
「なるべく自然に触れて、自分の感覚とか好奇心を育ててほしいなとは思います。小さなことですが、安全な土の上ならば靴下を脱いで裸足で歩いてみるとかですね。『汚いからやめなさい』と禁止してしまうことは簡単ですが、公園にあるちょっとした自然に目を向ける時間もいいですよね。
うちの子どもは外からたくさん石を拾ってくるんです。『これ、見て』と楽しそうに、ちょっと誇らしそうにしています。大人から見ると、どれも似通った形で同じに見えてしまうけど、大事そうにしているから『大切なんだろうな』と思っています。家には石が増えてしまいますが(笑)」













