「明日、話しますね」と笑顔で

それゆえ、昨年の11月からは2006年のドイツW杯までジーコ監督が率いていた時代のように、けがなどを負っている場合を除き、全ての選手が練習後に取材エリアを通ることになった(試合後はこれまでも常に全員が取材エリアを通るというルールが設定されていた)。

その上で、取材に応じる選手もいれば、応じない選手もいる。報道陣から声をかけられても「明日、話しますね」と笑顔で返して去っていくような選手も増えた。

キャプテンの板倉滉選手 写真/JMPA
キャプテンの板倉滉選手 写真/JMPA

そうしたルール変更により、大会中に選手が取材に応じる機会が、これまでと比べて圧倒的に増えることになった。メディアの体力も影響力も以前より大きく落ちているとはいえ、それでも多くの選手の声や発言が日本に届けられることで変化はあった。

試合で活躍した選手の声だけではなく、長友のような選手の存在意義だったり、彼の言動で刺激を受ける選手たちの声などが伝わるようになった。それは日本代表の魅力やスポーツの持つ価値というのを高めることにつながる。

何より、近年のW杯時と比べて、今大会中は大きく盛り上がることになった。

日本サッカー界のここ30年の成長は著しいものがある。

選手が所属するチームのレベルは上がり、欧米の屈強な選手と体をぶつけ合っても物ともしないようなフィジカル能力もついた。そして日本のエースである上田のようにオランダ1部エールディヴィジで得点王になる選手も出てきた。

ただ、サッカーの能力の向上だけではなく、選手たちのメディアとの距離感も大きく変わってきたということになる。彼らが成熟したことで、メディアともフラットに付き合えるようになり、彼らの立場からすれば"上手に"メディアを活用できるようになったわけだ。

今回のブラジルとの試合は、日本代表がW杯において、負けたら終わりの決勝トーナメントで、優勝経験国と初めて対戦するものとなる。現時点で、日本サッカー界におけるW杯史上最大の試合と言い換えられる。

そんな大一番への期待と注目が集まっている理由の一つが、選手たちのメディア対応が成熟したからであるということは、ここにしっかりと記録しておきたい。

取材・文/ミムラユウスケ