「火を入れているから安全」ではない…専門家が指摘する落とし穴
この「継ぎ足し」を続けるなかで、衛生面で意識していることがあるという。
「火を入れることと、鍋をきちんと洗うことは大事にしています。継ぎ足しカレーというと、鍋を何十年も洗っていないんじゃないかとか、鍋の上にゴキブリが住んでいても気づかないんじゃないかとか、いろいろ言われることもありますけど、そんなことはありません。毎日、鍋の中身を出して洗っています」(同)
店主にとって、継ぎ足しカレーは単なる調理法ではない。店の味を守るための“積み重ね”でもあるという。
「昔は冷蔵庫がなかったわけですから、“もったいない”という意識が今よりも強かったと思います。食材を無駄にしないために、塩分の高い調味料を使ったり、火を入れたりして保存期間を延ばしてきた。昔はそういった知恵が多くありました。
うちのカレーも、管理しながら継ぎ足しているので、家庭で何日もそのまま置いているカレーとは違います。
継ぎ足しカレーというのは、店の歴史そのものなんです。火の入れ方、味の調整、鍋の管理、そういう積み重ねで守ってきた“味”だと思っています」(同)
しかし、こうした「継ぎ足し」について、一般社団法人日本食中毒防止協会の専務理事・中島浩二氏(65)は「必ずしも安全とは言えない」と警鐘を鳴らす。
継ぎ足しカレーも、おでんの継ぎ足し出汁も、『火を入れているから安全』という考え方は大変危険です。
鍋の中が75度を超えると、ほとんどの雑菌は死にますが、ウエルシュ菌は自分を守るためのバリアを張るため、100度でも死にません。
火を止めて温度が下がり、40度から50度くらいの温度帯になると、ウエルシュ菌はバリアを解いて増殖し始めます。つまり、一度加熱しても、冷めていく過程で鍋の中のウエルシュ菌が増えてしまうんです。
さらに、一度冷ましてウエルシュ菌が増えたものにもう一度火にかけると、今度は大量のウエルシュ菌が一斉にバリアを張るため、その過程で、鍋の中に大量のエンテロトキシンという毒素が出ます。加熱と冷却を繰り返すほどリスクは高くなるんです。
ウエルシュ菌が増えた料理を食べると、菌が小腸まで到達し、小腸でもバリアを作るため、エンテロトキシンが産生されます。これによって食中毒が起きるんです」














