「ポジション問題」とピッチクロック

日本は送りバントや盗塁、進塁打など小技を駆使して得点を重ねる「スモール・ベースボール」がお家芸とされているなか、今江氏は長打力のあるバッターを多く選んだ。理由として、準々決勝以降で日本と対戦する可能性のあるチームに救援タイプが多いからだという。

2月時点でアメリカは16人中7人、ドミニカ共和国は15人中11人、ベネズエラは17人中11人と、短期決戦ならではの小刻みな継投で挑んでくると睨んでいる。

「球数制限(上限は1次ラウンド65球、準々決勝80球、準決勝以降95球。50球以上で中4日、30球または連投で中1日)があるので、海外のチームはショートイニングでどんどんピッチャーをつぎ込んでくることが予想されます。だからこそ、しっかりバットを振れる選手を揃えて攻撃的に打っていったほうが、相手に嫌なイメージを与えられるんじゃないかな、と思います」

さらに、代表選手が発表された際に噴出した「ポジション問題」。例えば、ショートを守ることが予想される小園が昨シーズンはサードで、佐藤もサード、鈴木はライトがメインだった。これについて、今江氏は「問題ないと思います」と指導者目線で説明する。

「絶対に専門職ではいけない、というわけではないと思います。ショートで言えば、前回も阪神ではセカンドの中野(拓夢)選手と西武の源田(壮亮)選手の併用でした。代表に選ばれるくらいの選手ですから、ディフェンス面の平均レベルは高いです。そこは、現役時代に『守備の名手』と呼ばれた井端(弘和)監督が考えていないはずがありません。

繰り返しになりますが、守ることよりも打つことに重きを置いたほうがいい。世界的にパワー野球となっているなか、初回から最少得点で守り抜く野球をしても、なかなか勝機を見出せないんじゃないかな、と考えます」

「短期決戦のWBCではできるだけチャンスを逃したくない。なので、1番の鈴木選手と2番の近藤選手で得点圏を演出してもらい、3番の大谷選手でランナーを還すというパターンを初回から作れれば、主導権を握りやすい」と語る今江敏晃氏
「短期決戦のWBCではできるだけチャンスを逃したくない。なので、1番の鈴木選手と2番の近藤選手で得点圏を演出してもらい、3番の大谷選手でランナーを還すというパターンを初回から作れれば、主導権を握りやすい」と語る今江敏晃氏

攻撃野球を実現できる一方、投手陣は不安要素が残る。14人のうち所属チームで先発を務める選手が11人と大半を占める。ゲーム終盤に頼りとなる救援陣も、西武の平良海馬、阪神の石井大智、パドレスの松井裕樹が故障により出場を辞退。

追加で招集された楽天の藤平尚真、西武の隅田知一郎、中日の金丸夢斗のうち、藤平以外は先発タイプである。

さらに不安を助長させるのが、今大会から導入されるピッチコムとピッチクロックだ。電子機器を使用し選手にサインを伝達ができる前者こそ問題はないとするが、後者は未知数だと今江氏は実情を口にする。

ピッチクロックとは、走者なしで15秒以内、走者ありだと18秒以内にピッチングモーションに入らなければならず、時間がオーバーすれば1ボールが加算される。また、打者から次の打者の初球までを30秒以内に投じなければならず、牽制球も原則2回までで3回目にアウトにできなければボークが与えられる。

バッターも上記15秒ないし18秒から8秒以内までに打席で構えなければ、1ストライクが加算されるペナルティを設けられている。それでも、今江氏は「やはりピッチャーの対応がカギを握る」と見ている。

「これまで、日本で使い慣れていないWBCの公式球だけでも苦労する選手がいたなかで、ピッチクロックも順応するまでに時間がかかるケースも出てくるかもしれません。なので、僕はメジャーでプレーするピッチャーの経験がポイントになると思っています」