寛容さが求められる時代だからこそ、線引きは必要

「『目標は何か?』ということですよね。選手たちの目標は甲子園です。目指す場所がユニフォームで野球をする以上、練習も同じ格好ですべきだよね、と。音楽が流れたなかで試合はしないし、大歓声のなかグラウンドでの声が通りにくいなら『普段から大声で出す習慣を身に付けたほうがいいよね』とか。

もちろん、選手たちが『何をしたいのか?』は尊重してあげるべきですけど、同時に『何をすべきか?』ということも具体的に示していくことも必要だと思っているので」

それは我妻自身、20代という若さで監督となり、30代、40代と指導者としての変遷を経てきたからこそ得られた答えでもある。ダメなものはダメ。寛容さが求められる時代だからこそ、高校生には線引きを強く意識づけさせないといけないと我妻は強く言う。

「どこへ行っても当たり前のことができること。それを見過ごすようではいけないと思うし、部活動の位置づけってそこだと思うんです。我々が学校生活からクラブ活動まで彼らを指導している以上は、そこから逃げたらやる意味がなくなってしまうので」

今の東北が恵まれているのは、佐藤の自由と我妻の規律が絶妙にブレンドされていることである。ふたりのエッセンスを吸収する選手たちは、そこを強みとする。

「タイプの違うピッチャーを複数擁しており、ゲームを組み立てる能力もある」と評価された東北高校
「タイプの違うピッチャーを複数擁しており、ゲームを組み立てる能力もある」と評価された東北高校

キャプテンの松本叶大が頷く。

「洋さんが『自分たちで考えること』を教えてくれたことで、今の監督になってからも自分たちで練習メニューを決めるとか、しっかりと野球と向き合えるようになりました」

そこは我妻も認めるところだ。東北大会での彼らの振る舞いを引き合いに、こう称える。

「ヒットを打ってすぐにガッツポーズしても、『まだプレーは続いているんだよ。最後までボールを確認しないと』と、少し言えばすぐに理解できる。冷静になって修正できる能力があるというか、反応が早いんです」

東北大会での結果が物語る。初戦で日大東北を8-0、準々決勝では日大山形に9-1と大勝。準決勝では大会で優勝した花巻東を相手に1-4と好ゲームを演出した。新たな東北の野球。それは、センバツでも大きな興味を与えることとなる。