5年かかった大胆な路線変更
そんな彼らが、新たなコンセプトのアルバム制作に取り掛かったのは2008年。それまでサンプリングやループといったデジタルな手法で作ってきた音楽を、人間の手による生の演奏で再現したいと考えた。
プロダクションはその方向性に難色を示したが、2人は一歩も譲らず、彼らがサンプリングで使ってきたドラムやベース、ギターを実際に鳴らせるプレーヤーたちを集結させた。
結果としてソウルやファンク、ディスコ、フュージョンなど様々なジャンルで時代を牽引してきた世界最高峰のミュージシャンたちによる、夢のようなセッションバンドが実現した。
制作に取り掛かってから5年後の2013年5月。ようやくリリースされた4枚目のアルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』は、デジタルの手法を排除して、1970年代のソウルやディスコ、ファンクを前面に押し出すという大胆な路線変更で、ファンを驚かせながらも世界中で大ヒットする。
中でも、ファレル・ウィリアムズがボーカルで参加した『ゲット・ラッキー』は、スポティファイで1億回以上再生され、史上最もストリーミングされた楽曲として認定された。
『ランダム・アクセス・メモリーズ』は懐古主義的にも捉えられかねないが、彼らにとっては意味のある挑戦だったという。
世界から切り離されたスタジオ。そんなカプセルの中にいるようなイメージにしたかったという。その時代の音楽を現在と未来へ持って行ったらどうなるのか。時代が変わっても伝わるのか。
そしてグラミーのステージでは、その“世界から切り離されたスタジオ”が見事に再現されることになった。
そこには『ランダム・アクセス・メモリーズ』にも参加したナイル・ロジャースをはじめ、時代を牽引してきた凄腕のプレーヤーたちが集まって、レコーディングを始めようとしている。観客たちは、現代からタイムスリップしてその歴史的瞬間を目撃できるという演出だ。
ゲストとしてスティーヴィー・ワンダーも加わり、その年の最優秀レコード賞を受賞した『ゲット・ラッキー』の演奏が始まった。
曲の途中で、それまで閉ざされていたミキシング・ブースのシャッターが上がり、ダフト・パンクの2人が登場すると、会場の盛り上がりは最高潮に達した。
過去と現在、そして未来を1つにつないだこのパフォーマンスは、ダンス・ミュージックのみならず、その先の音楽の可能性を指し示した。
文/佐藤輝 編集/TAP the POP













