「日本社会全体として課題の1つとして対応すべきではないか」

――国の主導で多様な埋葬方法を認めるべきとの機運を作ってほしいということですか。

というより、埋葬法ができた昭和23年(1948年)には今の問題は想定できなかったんですね。

日本人も含めイスラム教徒は(日本に)今少なくとも40万人ぐらいおられ、今後も増えることが予想されます。イスラム教の教義では火葬は禁じられています。だからその方々にとっては死生観に関わる深刻な問題なのですね。

全国には10か所ぐらい土葬可能な墓地があると承知していますが、九州にはありません。そこでイスラム教会の人達が墓地の開設権限がある自治体に認めてほしいと考えた。ところが住民の心配や反対が起こってなかなかうまくいかないという問題なんですね。

別府ムスリム教会で祈りをささげる人たち。2024年4月、大分県別府市(写真/共同通信)
別府ムスリム教会で祈りをささげる人たち。2024年4月、大分県別府市(写真/共同通信)

国による関与としては、これからの議論になりますが、私が思うのは例えば基本方針を示すということ。衛生面での対応や環境に与える影響への配慮が必要でしょう。最後は自治体の判断だとしても、そのための地域住民との合意形成はこういう形が望ましいと示すガイドラインですね。

例えば土葬墓地を作る時に防水シールドなど一定の対策が必要なら、その基準を示すとか、場合によっては一部支援をすることも含め、自治体が判断する材料を国が示すことが必要ではないかと考えています。

――ご自身は土葬を推進すべきという考えですか。

そういう質問の仕方がおかしいと思いますよ。土葬を推進する、しないという次元の話ではなくて、実際に日本に住んでおられる外国人の中にはそういうニーズがある。外国人をこれだけ受け入れてきてるわけですから、日本社会全体として共生のための課題の1つとして対応すべきではないかと言っているのです。

岩屋毅前外相の事務所には自ら筆で書いた「天下は一人を以て興る」という書が掛けられている(撮影/集英社オンライン)
岩屋毅前外相の事務所には自ら筆で書いた「天下は一人を以て興る」という書が掛けられている(撮影/集英社オンライン)

――日本でも昔は珍しくなく、埋葬法も禁じていない土葬に強い反対が起きるのはなぜでしょう。

(衛生面で)科学的に問題がない、対処ができるということはおそらく皆さん理解をしていると思うんですけど、やっぱり感情的にどうしても違和感があるからでしょう。あるいは、最近はちょっと排外的な主張が増えてきていることにも影響されていると思います。