便利屋は本当にひどい会社だった

―― その後、プロレスラーに転向されたことも、世間を騒がせましたね。

初代タイガーマスクの佐山聡さんが、北海道・旭川で新しく団体を立ち上げる話があって。それで知人の芸能プロデューサーからオファーが来たから、住み込みでやる覚悟で当時住んでいた横浜の家を解約して旭川まで車で行ったのに、なんとそこで交渉決裂してしまって。

佐山さん側と関係者のプロデューサーの間で何かがあり、結果的に『お前いらないから一旦戻れ』とプロデューサーから言われたんだけど、家を解約しちゃったから帰るところもない。仕方なく、しばらくはみなとみらいで車内生活をしていたんだよね。

でも、そんことしたら「坂本一生がホームレスになった!」なんてまた週刊誌の格好の餌食になるだろうから、バレないように気をつけながら、ランドマークタワーの一階のトイレで顔を洗ったり。

あれは本当に大変だったなあ。でも、佐山さんも被害者だったと思う。一生懸命教えてたのに、突然、話がなくなったわけだから。

その後、知り合いから借りたお金でアパートを契約することができて、またイチからアルバイトを始めたんだよね。

――華やかな芸能界の仕事から一転して、ホームレスになっていたとは初耳でした。その後も、ホストや探偵、便利屋、ラーメン店など、さまざまな職業を経験されましたね。

ホストは、週1の出勤で月の給料が保証されている形での出勤だったかな。探偵の仕事は…身体がデカいから目立つのと、顔がバレちゃってるから向いてなくて、すぐに辞めちゃいましたね。

便利屋は…本当にひどい会社だったな。取締役なんて名ばかりで、実際には客寄せパンダとして名前を利用されただけだったんだよね。

現在はパーソナルジムを経営している
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――確かに、当時坂本さんが便利屋へ転身したことは、テレビ番組でも取り上げられ、大きな話題となりましたね。

「坂本一生が便利屋に転身した!」ってテレビで特集を組んでもらって、「月収は200万円です!」なんて社長に言わされたりしたから、「そんなに儲かるのなら始めてみようかな」とフランチャイズに加盟した人がたくさんいて、加盟店は300店舗も増えた。

だけど、本当は年収は2000万円なんて嘘っぱちで、ずっと月に20万円程度しかもらえていなかったんだよね。店舗への加盟金は100万円だから、加盟店が増えたらその都度ボーナスがもらえるというのも口約束で、結局ほとんどお金はもらえなかったんだよ。

――便利屋への転身には、そんな裏側があったとは。

実際、特集された番組はほとんどヤラセだった。なくした結婚指輪を糠漬けの中で見つけたとか、スワヒリ語しかしゃべれないウガンダ人を道案内したとか、もうメチャクチャな設定(苦笑)。

深夜に、「家にナメクジが出た!すぐ来てください!」なんて電話がかかってきて、僕が駆けつけて駆除するシーンがあったんだけど、普通に考えてナメクジが2匹で、夜中に便利屋を呼ぶか?って。今思うと、当時のテレビ番組はめちゃくちゃだったよね。

取材・文/佐藤ちひろ

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