「今いる職人がいなくなったら終わってしまう」職人技術の継承が課題
ハイヒールづくりは、職人の技術がそのまま製品の完成度に反映される世界。特に、高さのあるヒールほど精度が求められ、わずかな歪みが仕上がりの美しさを左右するそうだ。
「高いヒールになればなるほど、細部のズレが全体のバランスに出てしまいます。だからこそ、丁寧な手作業が欠かせないんです。工房では、30年以上のキャリアを持つ熟練職人を中心に、サポートを含む7〜8名の体制で製造を続けています。メインの職人は4名で、いずれも30年以上の経験者で50〜70代です。婦人靴製造は分業制なので、裁断、ミシン、吊り込み(平面を立体に起こす)など、それぞれの工程に専門の職人が1、2名います」
ハイヒール商品の売り上げ減少は、職人の働き方にも影響を与えざるを得ないそうだ。
「弊社では職人は社員として雇用していますので、人員削減ということはしておりません。しかし、売り上げやコストを鑑みると、職人の方の生活を守りながらも勤務時間や勤務日数を調整せざるを得ない状況ではあります。
加えて、職人の高齢化が進んでいるため、技術をどのように継承していくかが非常に大きな課題になっています。技術の継承は本当に難しい。『今いる職人がいなくなったら終わってしまう』という危機感を抱いているのが実情です」
市場の縮小だけでなく、技能継承の困難──。職人文化を揺るがす課題は、同時に進行しているのだ。













