「上野のパンダじゃ満たされない」

浜家に心を奪われた石田さんは、毎年のように両親とともに白浜を訪れるようになった。基本的に和歌山観光はせず、空港を降りたら即アドベンチャーワールドへ。一日中園内に滞在し、ひたすら浜家を眺めていた。

「のんびり過ごすパンダたちをぼんやり見ていると、毎日来ている浜家ファンの人が、昨日パンダたちが何をしていたか教えてくれることがあるんです。浜家ファンの方々とのささやかな交流も喜びのひとつでした」

石田さんは浜家について「人生の楽しみだった」と話す。

キュートなポーズを決める彩浜(さいひん)(写真/石田さん)
キュートなポーズを決める彩浜(さいひん)(写真/石田さん)

「なかなか会いに行けないけれど、浜家の動画やライブ配信を見て癒され、毎日元気をもらっていました。ツラい大学受験も『大学に入ったらバイトをして、たくさんパンダを見に行くぞ』と思えば乗り越えられた。

どんなことがあっても『パンダに会える』という希望が、ずっと私を支えてくれていたんです。だから、返還は青天の霹靂でした」

返還から半年近くが経った今、公式SNSによる浜家関連の供給は激減。石田さんは「ペンギンとかの投稿ばっかりになった」と肩を落とす。悲しみを紛らわすため、上野動物園に行くこともあるそうだが。

「上野動物園はガラス越しでパンダとの間に距離感があるし、30分以上並んでも一目見て終わり。やっぱり上野のパンダじゃ満たされないんです」

現在はパンダグッズを収集して心を落ち着けているという石田さん。集めたパンダグッズは100個以上にのぼる(写真/石田さん)
現在はパンダグッズを収集して心を落ち着けているという石田さん。集めたパンダグッズは100個以上にのぼる(写真/石田さん)

来年1月には中国行きを計画していたが、急激な日中関係の悪化により、家族からストップをかけられてしまったという。

「私は彩浜(さいひん)推しで、先日、中国の研究所で彩浜の公開が始まったんです。中国行きのために頑張ってお金を貯めていたので、昨今の情勢はとても残念ですね。1日でも早く、安心してパンダを見に行けるような世の中になってほしいです」