「小泉前農水大臣も問題だったとは思いますよ」
例年、農協と“仁義なき戦い”を繰り広げてきた業者にとっても、最近までの過熱感は異常だった。
「ウチらが回っている農家さんも『これまで聞いたこともないような業者さんが売ってくれと頭を下げに来た』と言っていました。農協さんとは毎年バチバチの勝負をしてますが、今年はライバルが増えたような過熱感がありましたね。
それから値崩れが起こるんじゃないかという空気が漂いだしたのは、ここ1か月くらいのことです。ただ、仕入れ価格もありますから今のところウチは価格を崩すつもりはありません。次の仕入れ価格が下がっていれば、当然売値も落ちますけどね。農家さんは『こんな年はもうねえだろ』って鼻息荒かったですね。ベースは向後米穀ですが、ウチも関連で農業生産法人を持っていてコメの生産が1200俵くらいあるんで、高ければそっちはありがたいんですけどね」
それが一転、コメ余りにシフトしていった。スーパーなど小売店の状況はどう変わったのか。
「コメが『動かねえなあ。こりゃおかしいな』って思ったのは10月半ばから後半くらいです。量販店やスーパーから注文が来なくなったんですよ。備蓄米もあるし、外米(外国産米)も入ってくる。そもそもふたつ選択肢があるからそのぶん新米は動かなくなりますよね。
この状況が続けば、例えばですが『ウチも3%泣くから量販さんも3%泣いて特売しようよ』みたいな話になっていくんだと思いますよ。まだこの流れにはなっていませんが、来年の1月、2月ごろにはそうなっている可能性はありますね。
業者間でもコメが思ったよりさばけずに、『このままじゃコメが余る』と危機感を訴えるような話も多いです。今回のコメの高騰で損失を一番被るのはウチらみたいな集荷業者兼卸しをやっているところですから。定期的に一定数はけてくれるといいんですけど例年より遅い感じがしますから不安はありますよね。
たしかにコメの価格が倍になると家計に響くだろうし、令和の米騒動からの高騰は、世間一般の感覚の値上がり想定ラインをはるかに超えちゃってますから、やっぱり手出しづらいのもわからなくないです」
はたして「令和の米騒動」による米価の高騰は向後米穀や業界にとって吉と出たのか。
「今年もけっこう利益が出せて設備も色々新しくできるのかなって、そんなスタンスではいたんですけどね。ただ10月の半ばからコメが動かず少し変わってきました。コメ騒動での利益に関して言えば、ウチも新規で値段は上げさせてもらって利益は出ていました。米穀業界はみんな過去最高益プラス最高売り上げに達していると思いますね。
これがね、5年後にこのレベルならいいんですよ。ただ1年で一気にいってバブルになってしまったので、かえって今は読めない状況になっていますね。これはどこが悪いというわけではないと思いますが、出し惜しみした政府も問題だったでしょうし、逆にコントロールせずに一気に出した小泉前農水大臣も問題だったとは思いますよ。
今の鈴木大臣に関しては農水官僚出身なので冷静に状況を見ているなと感じています。ここで少し価格を抑える形にはなるかもしれませんが、5年後の農家さんのことを考えればそちらの方がいいと思いますね」













