店は休業、補助金も入らず… 

Aさんを襲ったのは子グマだったが、子グマといえど爪や牙が鋭く、力も強いため危険とされている。特に母グマから離れてしまった子グマは「はぐれ子グマ」と称され、パニックになって攻撃的になり人を襲う可能性があるとされている。

そんなはぐれ子グマは現在、秋田県や北海道から岐阜県まで全国各地で出没している。直近では12日、いわて花巻空港の駐車場で子グマ1頭が滑走路を横断したことで、発着便に遅れが出たことは記憶に新しい。

ラーメン店に勤務するほかの女性従業員がこう不安を吐露した。

「Aさんが襲われたところはいつも従業員が出入りしているところです。女性従業員のなかで、もし私たちが襲われていたらどうしよう、死んでいたのではと不安の声が上がっています。今回は(被害に遭ったのが)男性で相手が子グマだったらか何とか生きれたものの、もし私たちが襲われていたらと考えると、ゾワっとします」

店舗は休業になった(店舗SNSより)
店舗は休業になった(店舗SNSより)

Aさんが襲われたことにより、店はその日に臨時休業の選択肢を取った。現在ものれんは店内にしまったままだ。オーナーの佐々木さんは語る。

「(お店で提供しているのは)自家製麺なので、店の裏に麺を仕込む小屋があるんです。営業前は従業員がみんな通るところでもある。そこで子グマに襲われた。もしかしたら他の従業員が襲われていたかもしれない。小柄な女性が襲われていたらどうなっていたことか。このあたりはクマを見ることがあっても、いままで人が襲われることは一度もなかったんだ。

現在、クマ対策用の柵を設置しようとしており、数十万円のお金がかかる。店を休業したことにより、売り上げも入ってこない。商工会に聞いたら補助金はないって。従業員を守るために必要なことで、仕方ないと割り切っているが、クマ被害が全国では多発しているんだから、なにか制度があってもいいんじゃねえか」(オーナー・佐々木さん)

Aさんもいち早くの社会復帰を望んでいるという。佐々木さんが続ける。

「(Aさんは)透析の専門病院に長年勤めていたが、どうしても好きなラーメンの仕事をしたかったと聞いている。もともと中学校時代からのお互いを知っていて、同じ学年で他校同士だったものの野球仲間ということで顔なじみだった。ある日、急に電話がかかってきて、『働かせてほしい』と頼みこまれた。

医療系とは畑違いの仕事でもあるから、向いていないかもと思って断っていたけど、熱量に負けて去年7月頃から働いてもらっていた。仕事は真面目だし、責任感があるまじめな男だよ。仕込みも覚えて、“やれてるな”って思ってたところでこの事故だった」

Aさんはいまも周囲に「自分が休んでしまったことで、迷惑をかけてしまっている」「早く仕事に戻りたい」と漏らしているという。

クマは間も無く冬眠期に入るが、冬眠が遅れることも懸念されており、今年いっぱい警戒が続く。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班