“レジェンド”とか持ち上げられるけど…「笑えないですよ」

11月9日、青森県三戸町内のラーメン店に勤務するAさんがクマに襲われたものの、反撃しボコボコに殴り、最後には投げ飛ばしたことを集英社オンラインは報じた。男性によると、襲ってきたクマは体長1メートルほどで、子グマだったという。男性は右目付近に裂傷を負ったものの、子グマは男性を襲うのを止め、近くの山へ逃げていった。

このことは全国的なニュースとして取り上げられ、男性を“レジェンド”と持ち上げる記事まで出たが、Aさんの内心は異なる。

「ケンカなんて若い頃はしたことがあるけれど、もうクマが一番強かった。勇敢だ!すごい!とかいわれているけれど、本音は死ぬかと思って必死だった。笑えないですよ。本当に。『ダメだこりゃ』と思って。『逃げようが隠れようがどうしようもねえ』と思って、向かって戦った」

Aさん(写真/Aさん提供)
Aさん(写真/Aさん提供)
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状況を整理しよう。

男性は9日午前5時、朝ラーメンの仕込みをするために「麺工房てんや三戸店」に出勤した。当時の気温は0.9度と低く、雨は降らなかったものの寒さが肌に沁みる日だった。

店裏に出てガス栓を開けようとすると、黒くて大きい物体が動いており、男性は当時「大きい犬かと思った」と語る。ところが正体は子グマで、急に襲いかかってきたという。

「俺の顔を目掛けて、バーンと爪のある手で襲ってきた。避けきれなくて、爪で右目付近を引っ掻かれてしまった。逃げたら殺される。死ぬなと思って抵抗した。左手で子グマの顔面を殴ったが全然効かない。何度も殴ってもさ、全然びくともしない。とにかく手が痛かった。クマの体は硬い筋肉というか、鉄板みたいな毛皮に覆われている感じ。

戦い方を変えて、クマの懐に入る感じで脚を引っかけたら、ゴロンと後ろに転がった。それで助かった感じですね。柔道でいう大外刈りでした。後ろに倒れたクマは国道の方にある店と反対側の山へ逃げていった」

クマ襲撃の現場に立つラーメン店オーナーの佐々木さん(撮影/集英社オンライン)
クマ襲撃の現場に立つラーメン店オーナーの佐々木さん(撮影/集英社オンライン)

男性はその後、救急車で搬送され、右目付近を10針縫う大ケガをした。また、右脇腹を骨折していた。