命の価値もとても低かった

なぜ、それほどまでに価値観が違ったのでしょうか。

それは、環境が違ったからです。

日本に限らず、過去の社会では「人が死ぬ」ことは珍しいことではありませんでした。戦乱の時代なら殺し合いがしばしば発生していましたし、医療は未発達で食料は不十分でしたから、乳幼児や子供の死亡率は非常に高かったと推測されています。

命の価値が低かったのは、死と隣り合わせの環境だったことと密接に関係しているのではないでしょうか。

もし命を重んじていたら、武士は勝ち上がれなかったでしょうし、農民は家族が増えすぎて、飢え死のリスクに直面していたでしょう。僕たちの価値観は、環境によって強く規定されています。ということは、環境が変われば価値観も変わるわけです。

それは、「絶対的な価値観が存在しない」ということでもあります。

僕たちが、目の前にある価値観を唯一絶対の「当たり前」と捉えてしまうのは、その価値観が形成された過程を知らず、それ以外の価値観を知らないからです。

歴史を学ぶと、人々の価値観や「当たり前」がどう変わってきたのかを発見することができます。すると、特定の価値観に距離を置けるようになります。それが、僕が言う今の自分を取り巻く状況を一歩引いて客観的に見る「メタ認知」です。

僕たちの「当たり前」は、社会に規定されているものなのです。