「新しいものへの拒否感」「事なかれ主義」「忖度」という三大悪癖
おかげで中高年がジジイ化するリスクは減ったが、代わりに目指すべきゴールも、中高年の拠りどころもすべて消えた。
最大の問題は、彼らが持つ「新しいものへの拒否感」「事なかれ主義」「忖度」という三大悪癖が、新世代型の中高年に受け継がれてしまったことだ。
「新世代型なんだから、それはないのでは?」「ジジイのような権力がないわけだし」「同じように言われてしまうのはちょっと」……。いやいや、申し訳ない。正確に言いかえよう。それは日本の組織文化に深く根付いた「タテの関係」が生み出した悪癖であり、同時に組織人として避けられない行動様式でもある。「新しいものへの拒否感」「事なかれ主義」「忖度」という三大悪癖だ。
ここで参考までに、日本社会に残存するジジイの壁の内部構造をのぞいてみよう。城壁の内部では会長・経営者・社長などの大ジジイが絶対的な権力を持ち、コンプライアンスやガバナンスを超えた存在として君臨する。そのため人事権も含めた組織の決定事項はすべて「大ジジイ案件」となる。
大ジジイは長年の会社員生活で手にした既得権益をとても大切にしているので、役員レベルの「中ジジイ」は決して危険をおかさない。常に大ジジイの心情を推しはかり、言われる前に動き、機嫌を損ねないことだけに終始する。
さらに、部長レベルの「小ジジイ」も自分可愛さから「逆らわない」をモットーにしているので、見て見ないふり、気づいても気づかないふりを徹底する。
そもそも城壁の内部は、「部下が上司に義を尽くし、上司は部下に情で返す」組織文化が深く根付いているので、権力者におもねるのが最善の処世術になりうるわけだ。しかも、城壁内部では自己保身から派生する奇妙な相互依存と共同意識が、まるで蜘蛛の巣のごとく張り巡らされている。何が起ころうとも責任を追及したり、自分より上の人が不利益になることは御法度だ。ときには大ジジイが温情をかけて守ってくれることもある。
結果、大ジジイの権力は巨大化し、「組織の論理」という言葉を借りた教条主義、前例至上主義が刷り込まれていく。
人間には変わることを嫌う本性もあるので、この状態はとても居心地がいいのだ。













