ベッセント財務長官らが日本に圧力をかけ始めている

日本側が一時しのぎのために虎の子のカードを最初から切った行為は、トランプ大統領側からの新たな交渉を想定していないように見える。仮にトランプ大統領から追加貿易交渉を求められた場合、日本側は代わりに差し出す有力な代替案は残っていない。

そのため、将来的に現状のスキームから投資額をズルズルと引き上げられていく姿が容易に浮かぶ。

既にトランプ政権が求める新たなディールの一部は報道されている。たとえば、ロシア産エネルギーの購入停止だ。

日本はサハリンからのエネルギーを輸入しており、これは日本のエネルギー資源調達先の多様化に寄与している。しかし、米ロ関係の悪化によってベッセント財務長官らが日本にサハリンからのエネルギー資源購入をやめるように圧力をかけ始めている。

日本がサハリンから購入しているLNGは全体の約1割、仮にこの購入を停止した場合、日本はその代替として米国からのエネルギー資源の追加購入を迫られることになる。

筆者は調達先多様化の観点から米国からのエネルギー資源購入を増やすべきという立場だが、米国に言われた通りに実行することは話が異なるものと考える。

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新たな要求として投資額引き上げも

また、追加の農産物購入や米国製品の購入も提示されることも想定すべきだ。米国は自動車関税等の強力なセクター別関税を有しており、日本に対していつでも圧力をかけることができる。

つまり、日本側はこの問題に対しては常に受け身の立場に置かれるため、トランプ大統領と直接面会する度に新たな要求が待っていると思ったほうが良い。交渉とは一度まとまったら終わりではなく、そこから新たな交渉が始まっているものだ。

いずれにせよ、石破政権が米側から見て何時でも金額を引き上げられる対米投資スキームを作ってしまった以上、トランプ大統領からの新たな要求は常に投資額引き上げという結論に帰結するリスクがあることは認識されるべきだ。

第二に安全保障関連の協議が想定される。

この点については日本側も予め準備が進んでおり、経済安全保障、サイバーセキュリティ、インテリジェンス、サプライチェーン強化など日本側もしっかりと対応できるだろう。

そのため、一見すると、日米ともにポジティブな協力関係を強化できるバラ色の未来が待っているかのようだ。