今だからこそ「映画館で」

日本での上映は、北米での成功を受け、東宝がスタジオジブリに相談を持ちかけたことで実現。今回のIMAX上映に関して、吉田氏は「映画館での鑑賞体験を提供することが何より重要」と強調する。

「テレビなどでジブリ作品を目にする機会は多いと思いますが、映画館での鑑賞体験は全く異なるものだと思っています。これは2020年の再上映時にも実感したことでした。

コロナ禍により映画館が休業を余儀なくされ、営業再開後も新作映画がなく、客足が戻らない状況が続きました。そんな中、私どもは藁にもすがる思いで、スタジオジブリに再上映の相談を持ちかけました。

上映して気づいたのは、時間が経過したことで、スタジオジブリの過去作品を映画館で鑑賞したことのない層が増えていたこと。また、過去に鑑賞した方々も含め、映画館で『再び観たい』という需要が非常に高かったことです。以降、何らかの機会があれば映画館での上映を実現したいという思いを持ち続けていました。

今回の4K、そしてIMAXという映像のアップデートを最も体感できる場は映画館。その価値をぜひ多くの方に感じていただきたいです」

「もののけ姫」より
「もののけ姫」より

 近年、過去の名作を4Kデジタルリマスター版として再上映する動きが続いている。東宝では、今年2月に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版』および『イノセンス 4Kリマスター版』を上映した。吉田氏は、これらの動きも2020年のジブリ作品再上映が契機となったと語る。

「これだと思える作品があれば、積極的に取り組んでいきたいという意欲を持っています。スタジオジブリ作品についても、他作品で同様の取り組みがある場合には、ぜひご相談させていただきたいです。

ちなみに昨日、北米でGKIDSの首脳陣と面会し、『他のジブリ作品はどうなっているの?』と尋ねたところ、詳細は教えてもらえませんでした(笑)」

「#一生に一度は、映画館でジブリを。」というコンセプトで2020年に再上映されたジブリ作品。あれから5年の歳月を経て最先端の技術で蘇る。吉田氏は取材の最後に「私もやっぱり映画館でジブリを観たい」と笑顔で語っていた――。

「もののけ姫」より
「もののけ姫」より
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「もののけ姫」4Kデジタルリマスター
原作・脚本・監督:宮崎 駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石 譲
主題歌:米良美一
声の出演:松田洋治 ⋅ 石田ゆり子 ⋅ 田中裕子 ⋅ 小林 薫 ⋅ 西村雅彦 ⋅ 上條恒彦 ⋅ 美輪明宏 ⋅ 森 光子 ⋅ 森繁久彌

(C) 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND

取材・文/羽田健治