「何これ、演歌?」

──レコード会社に入ってからは、どんな日々でしたか?

最初の3年くらいは、ずっとレコーディングばっかりでしたね。どうやって面白い曲を作るか、もう本当にそれだけが目標でした。辛くもあったけど、やっぱり楽しかったです。

ライブも最初は大変だったけど、だんだん面白さもわかってきたんです。レコーディングしたものをそのままライブで再現するのは、不可能なんですよ。(音源では10人近い演奏の曲は)5~6人のバンドだと、再現できないですよね。だから「ライブならどういう風に演奏しよう?」と考えるのが楽しい所ですね。

バンドメンバーはみんな、私よりちょっと年上で、フレンドリーで優しいお兄さんというか、面白い人たちばかりでした。

──非常に充実した新人時代だった訳ですね。

でも、曲を聴いて「何これ、演歌?」という感想をもらうこともありましたね(笑)。こっちは(映画監督の)フェリーニとかのつもりだけど、単に「マイナーコードで古い歌」みたいな感じで認識されてたんですかね? でも、世の中的にもだんだん、そういう曲が増えてきて、みんな慣れていったような気がします。

デビュー後は「ヴィレッジヴァンガード」をはじめ、さまざまな場所でプッシュされた
デビュー後は「ヴィレッジヴァンガード」をはじめ、さまざまな場所でプッシュされた

──2000年前後はカバーブームだったり、昭和歌謡リバイバルがありましたよね。EGO-WRAPPIN’だったり、クレイジーケンバンドだったり。

でも、そういうブームも、追い風のようでそうでもなかったのかな、と今では思います。自分にとってはしっくり来ないというか。

──確かに、小島さんの音楽ってただ古いだけではないですよね。レトロな中にも新しい部分があるというか。

なんだろう……歌詞かな(笑)? 私は歌詞に「アホさ」が欲しいんですよ。あんまり「二の線」なものは好きじゃないですね。ゲラゲラ笑うような感じじゃなくて、ちょっとおかしい、聴いてて楽しくなるような、ほどよい「アホさ」が欲しいなーと、いつも思ってましたね。

──30年という時を経て、当時と今で、音楽業界も世の中もいろいろ変わりましたよね。

違いますよね。昔だったら、キャンペーンで地方を周ったりしたけど、今は動画もコメントもネットで発信できるし。CDも作らなくなって、配信ですもんね。

それに、レコーディングしてても、歌のピッチが気になって歌い直そうとしたら、エンジニアさんから「あ、こっちで後で直しときます」なんて言われて、どうやって? といまだに思います(笑)。