党員投票は「約8割程度がすでに済んでいる」(自民党関係者)との見方も 

こうした事態を受けて、自民党本部の関係者は筆者の取材に対し、「(総裁選を統括する)総裁選挙管理委員会は、この問題を“高市潰し”とは捉えていない」と証言し、一連の経緯をこう振り返った。

「神奈川県で、昨年、一昨年に党費を払って、党員資格を得た人は本来、今回の総裁選における投票権があります。しかし、その人たちに投票用紙が送られていなかった。『どういうことだ?』と問い合わせがあって、確認したところ、昨年の衆院選で落選した方の紹介で登録していた人たちについて、党籍離脱、離党の手続きをしてしまっていたことが判明した。

つまり、県連側の手続きで、『落選した方の紹介で入党した方たちだから、どうせ継続しないだろう』と勝手に判断していた。本来は、年末に本人が継続しなければ、党籍抹消になるだけなので、そんなことをしなければよかった。例外的な手続きで、瑕疵があったのは間違いありません。これはまずいということで、速達で投票用紙を送り、間に合っていると聞いています」

党本部で開催された政策討論会の様子(自民党広報Xより)
党本部で開催された政策討論会の様子(自民党広報Xより)

実際、自民党総裁選挙管理委員会は9月27日に、総裁選の投票資格のある党員らの人数を訂正し、神奈川県が5万7344人から、5万8170人に増えると発表していた。全国では、91万5574人から91万6400人になっている。

「ただ、選管としては“高市潰し”だという認識はもっていません。総裁選目的で、離党手続きをやったとは捉えていないのです。そもそも、手続きが行なわれていた時点では、総裁選があるかどうかも全くわからない状態でしたからね。総裁選の勝敗を左右しようとして、意図的にやったということは考えにくい。

今後、事実確認は進めますが、選管がやる議論ではないのではないか。神奈川県連はもちろんですが、党本部では組織運動本部などで、党員の管理のあり方として、どうあるべきだったかが議論されることになるでしょう」(前出・党本部関係者)

自由民主党本部(PhotoAC)
自由民主党本部(PhotoAC)
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つまり、党本部の認識としては、選管として問題にするのではなく、あくまで「手続き上の瑕疵」だという受け止めなのだ。そもそも、党員投票は「約8割程度がすでに済んでいる」(自民党関係者)との見方もあり、影響は限定的かもしれない。

10月4日の投開票日が近づき、各陣営がヒートアップする中、報道各社も終盤情勢を報道している。

自民党総裁選は、国会議員票(295)と、党員・党友票(295=ドント方式で配分)の計590票の投票が行なわれる。1回目に過半数を占める候補がいなければ、そのうち1位と2位の候補を対象に、国会議員票(295)と都道府県連票(47)の合計342票による決選投票で決める。

時事通信が10月1日に報じた党員票予測では、高市氏と小泉氏が競る展開だという。また、朝日新聞電子版が9月30日に報じた各候補の議員票の動向は、小泉氏が72人、林芳正官房長官(64)が57人、高市氏が37人という結果だった。

「高市氏は党員票に強みがある。普通に考えれば、小泉氏、高市氏による決選投票になるだろう。そして、決選投票になれば、高市氏の議員票はそれほど伸びず、小泉氏が強い。ただ、ここにきて林氏の議員票の伸びが気になる。可能性は低いが、万が一、進次郎、林さんの決選投票になった時には、結果が読めなくなるな……」

自民党の重要閣僚経験者は見通しをそう語った。結果は、いかに。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班