ライフルの訓練が一番大変だった
――そもそも、ゆかさんがサファリガイドを目指したきっかけは?
もともと動物が大好きで、将来は野生動物保護に関わる仕事がしたいと考えていました。大学2年生のとき、たまたまネットで見つけたアフリカのボツワナ共和国で行われる3週間の保全プロジェクトにボランティアとして参加しました。そこで初めてアフリカに足を踏み入れたんです。
「動物の大国といえばアフリカ」という漠然としたイメージしかなかったのに、目の前には何百キロも続く大自然と、人と動物が共存する姿が広がっていました。その圧倒的な光景に価値観を一気に塗り替えられ、「ここで働きたい」と強く思ったのが出発点でした。
そこでボツワナ共和国でサファリガイドをしているフランス人女性に訓練学校を紹介してもらい、大学3年生のときに立教大学に籍を置きながら、訓練学校に1年間通いました。あのときの決断がなかったら、今の自分はいないと思います。
――訓練学校時代は1年間テント暮らしをしていたとか?
はい。サバンナの中に建てられたテントで生活していました。電気は通っていませんでしたが、水道はありました。でも、象に水道管を壊されてしまい、1週間シャワーを浴びられないこともありました。それでも「これも経験だ」と思って楽しんでいました。
――訓練学校でいちばん大変だったことは?
内容面で一番大変だったのはライフルの訓練です。日本ではまず触れることのない大きくて重い銃を扱う恐怖に加えて、試験のプレッシャーが一番ストレスでした。訓練学校に入った最初の頃は、普通の女子大生で筋力もなかったので、本物の銃を持たせてもらえず、砂がまんぱんに入れられたペットボトルが3つぶら下がった木の棒を持ってトレーニングしていました。ライフルの訓練は体力的にも精神的にも厳しかったです。
――実際、動物をライフルで撃ったことはありますか?
今まで10年サファリガイドをやってきましたが、動物を撃ったことは一度もありません。幸い、怪我人が出るような危険な目に遭ったこともないですね。ライフルを構えなければならない場面はありましたが、実際に引き金を引くところまでは至っていません。このままガイド人生を終えるまで、そういうことがないように願っています。
――構えるほどギリギリの場面もあったんですか?
はい。バッファローに突進されかけたときです。思わずライフルを構えましたが、直前で進路を変えてくれて撃たずに済みました。南アフリカ人のグループを案内している最中でしたが、本当に一瞬の出来事で、1秒もない間に全てが起こったので、お客さんは何が起きたのかほとんど分かっていませんでしたね。