ネズミ混入騒動から半年
「今回の価格改定は、名目賃金の上昇が見られる一方、物価高により実質賃金の上昇は依然として限定的な経済環境の中、すき家の牛丼を多くのお客様により手頃な価格でお楽しみいただきたいという想いから実施しました。一方で、技術革新などによる生産性向上を行ない、労働生産性の高いビジネスモデルをより強固なものにしていきます」
さらに、現場で働く人の待遇についても明言する。
「すき家を傘下にもつゼンショーホールディングスは、2030年までの継続的な賃上げを行うことを2011年に労使間で合意しています。今回の値下げにあたっても、賃上げを継続する方針に変更はありません」
「値下げの裏で現場が苦しくなるのでは」という懸念に対して、あくまで生産性向上によってコストを吸収し、賃上げを守るという姿勢を打ち出している。
もうひとつ気になるのは、価格を下げても「品質が落ちないのか」という点だ。昨今の値段上昇で特に注目されているのは米の価格高騰。数年前の倍以上の値段になる中で、すき家は国産米の使用を徹底。
「日本のお客様の国産米に対する支持やニーズは大きいため、それに応えるべくゼンショーグループの国内全業態において国産米を使用しています」との理由で、米の価格高騰が続いても、国産米の使用を続ける方針であることがわかった。
今年3月には、みそ汁に異物(ネズミ)が混入する騒動を受け、すき家は清掃作業や衛生面の対策をとるために4日間全店休業という異例の対応をとった。その後、4月からは午前3時〜4時の間に集中清掃時間を設ける取り組みを開始。店舗の衛生レベルを高めるなど、ブランドの信頼回復に取り組んできた。
今回の値下げは、そうした一連の改善施策とあわせて、再び「行きたくなるすき家」へイメージを立て直す狙いも感じられる。
30円の値下げにどれほどの効果があるのかは未知数だが、大手チェーンで最安値というインパクトは確かに強い。今回の値下げが再び“牛丼戦争”の火ぶたを切るのか、それともさらなる差別化が進むきっかけとなるのか。他チェーンの動きにも注目が集まる。
取材・文/集英社オンライン編集部