婚活して妊娠、しかし夫はW不倫
現在、みぞのさんはシングルマザー。学歴や生育環境だけでなく結婚生活においても一波乱を経験している。
「29歳にして新卒の私は就職活動がうまくいかないことはわかっていたので、婚活のほうへ舵を切りました。
所属していたオーケストラサークルの先輩と結婚することができたのですが、私の出産時期に彼が同じサークルの私の同期とW不倫をしていたことがわかりました。
別居後に裁判所から分厚い書類が送られてきて、夫側が子どもの監護権を主張して闘う姿勢を見せるなど、結構な泥沼に。もっとも、その後、裁判所が夫に対して不倫をしていた事実を確認すると、申し立ては取り下げられたのですが」
しかし、意外にもみぞのさんは夫と関係性の再構築を試みたのだという。
「子どもにとっての父親でもあるので、また一緒に暮らすことにしました。しかし子どものことはかわいがるけれども、『りほに対しては気持ちがない。今後も好きにならない』などときっぱり言うので、もうやっていけないと判断して、離婚をすることにしました」
母への感謝と子どもの今後
高IQをいかんなく発揮して名門校に入り、音楽においては小学校高学年で吹奏楽の全国大会に出場するなど、多岐にわたる才能を感じさせるみぞのさん。一方で、不登校や引きこもりや家庭内暴力など苦境にあえぐ時間も長かった半生を振り返る。
「学生時代、いろんなことを人よりも高いレベルでこなせていた自覚はあります。もしもあのとき、がんばり続けたらエリートになれたのかもと思うことは、正直あります。
……でも、疲れちゃったんです。あるとき、心がぽっきりと折れてしまって。人に期待されることから逃げたくなってしまったんですよね」
いいときも悪いときも傍で見守ってくれた母親には、こんな感情があるという。
「母は私が引きこもったときも、住む家を用意してくれて、一生働かなくても大丈夫なくらいの蓄えを築いてくれたようです。もちろん、私はいずれは大学で学んで社会に出て、働ければとは思っていましたが、その気持ちがうれしいですよね。
母が私のために、あの父に抗って離婚という選択をしてくれたことも愛情を感じます。今は私も一児の母なので、そんなふうに子どもを守れるようになりたいですね」
人は器用貧乏、宝の持ち腐れと笑うかもしれない。けれども回り道の末にたどり着いた場所で、みぞのさんは人生に欠かせない愛情の手触りを感じ始めている。
取材・文/黒島暁生 写真/本人提供