「大学進学か寿司職人か」究極の2択を迫られた鎌田實氏が気づいた、10代で勉強することの大切さともうひとつの生き方
全国の高校で20年以上、人生の歩き方について語り続けてきた医師の鎌田實氏。彼が説くのは、「回り道」と「10代で勉強すること」の大切さ。鎌田氏自身は過去に「大学受験に失敗したら寿司屋になる」と父親に約束し、そこで大学進学に固執しない考え方を得たという。
その独自の人生哲学を新刊『17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち1回目〉
17歳のきみへ #1
「大学に行くこと」が大事なのか?
僕は「大学受験に失敗したら寿司屋になる」と父親と約束した。
子どもの頃貧乏だったため、夏休みになってもどこにも行けませんでした。母は重い心臓病で入院しています。
でも僕は、どこにも行けなかったからこそ、心の中で、大人になったら世界中を飛び回れる人になりたいと夢をふくらませていた。
医者になることが最終的な夢ではなかった。
だから中途半端に学部を変えて何が何でも大学に行くのではなく、医学部がだめなら寿司屋になると決めていたのです。
大学進学か寿司職人かの2択を迫られた鎌田氏
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仮に親方からひどい目にあったとしても、10年は我慢して働き、しっかりお金を貯めて、僕は小さな店を自分で出し、誰にも負けない名店を作れるんじゃないかと信じていました。
大学に行かず12年苦労して30歳。小さな店を持って35歳で評判にする。僕は世界に飛び出したかったから、きっと寿司チェーン店を世界に展開したと思います。
結局、大学へ行っても行かなくても、どうしたら自分の人生を面白くできるかと考えることが大事なのです。
鎌田は医者になったから、言いたいこと言ってやりたいことがやれていいよな、とよく言われますが、医者になってもほとんどの人は言いたいこともやりたいこともやれていない気がします。
多くの人たちは、東大に入りたいとか医学部に入りたいなどの形が先に立って、それが実現すると夢を追うことが終わっちゃうんだよね。
大事なことは16歳から18歳くらいの間に、自分はどんなふうに生きたいのか熱い思いを持つこと。大学に入ることが重要じゃなくて、入って自分が何をしたいかを、みんなも考えて、言葉にしてみてください。
そういう思いがあれば、たとえ一度や二度失敗したって人生はどうってことはないんです。回り道には、それなりの意味があるかもしれません。
10代のときに勉強することが大事
医学部に入ったからって誰でも立派な医者になれるわけではない。患者さんの心がわかる医者になれるのは、百人いてもひとにぎりです。
飲食店も同じです。高いお金を払ってでも客がたくさん来るお寿司屋さんやラーメン屋さんには、その人だけの「言葉」がある。
優れた経営者も芸術家も、政治家も探検家も科学者も、みんな自分の言葉を持っていることを忘れないでね。
どのように自身の言葉を獲得すればいいのか
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だから、10代のときに勉強することが大事なんです。勉強が嫌いでも本は読んだほうがいいよね。言葉がなくなると自己の形成が難しくなってしまいます。
言葉がいろいろな役割を担っていることを知っていてほしいです。水が半分しか入っていないコップを見て、「半分しかないのか」と思う人もいれば「まだまだ半分ある」と思う人もいます。
言葉は感情や想像力を作り出し、人それぞれの行動を引き起こす力となります。
#2に続く
文/鎌田實 写真/Shutterstock
17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない
鎌田實
2025/4/25
1,650円(税込)
136ページ
ISBN: 978-4087817652
エールを送る一冊。
全国の高校で20年以上、人生の歩き方を語り続けるドクター鎌田の「読む講演」。
〈はじめに より〉
僕が17歳の頃どんな考え方をしていたのか、その考え方がその後どんなふうに自分の人生を変えていったかを書いてみました。(中略)
タイトルは『17歳のきみへ』ですが、実際には15歳くらいから22歳くらいの若者に読んでもらえたら嬉しいなあと思っています。
きみのことをよく理解してくれる家族、反対に全く理解してくれない親やおじいちゃんおばあちゃん、あるいは学校の先生がこの本を読んでも、お互いが分かり合えるように書いたつもりです。
〈第1章 人生の壁を壊す言葉を持とう〉
成功する人には言葉がある
図書館の本に育てられた
人の心を動かせる人とは
〇じゃなくて△でいい
人それぞれの波がある
人生の壁を壊す言葉を持とう
「まわりの人と違う」のは生きる武器になる
なぜ勉強するんだろう
「反偏差値」の流れがきっとやってくる
越境する快感
〈第2章 個性と自由〉
人の世をのどかに、人の心を豊かに
攻撃してくる人の思い通りにならない
1%なら誰かのために生きられる
東大中退
遺伝子に縛られずに生きる
人には「失敗する自由」だってある
英語ができなくてもノーベル賞
発想力で勝負。これならきみも闘えるはず!
仲間を大事にすると、いいことがある
〈第3章 自分を生きる〉
17歳からの人生の走り方、泳ぎ方、飛び方
「熱情」と「冷静」
17歳でまだ何も起きていなくても
海で溺れている人がいたら、泳げる人は海へ飛び込め
やりたいことは、あきらめない
巨大なネットワークの中で、すべてのものはつながっている
僕の中にいる「三分の一の悪人」
『5月35日』という発想力を忘れるな
17歳のときに身につけた5つの「生きる力」
比べない習慣を持つと、生きるのが楽になる
若い頃から自分の心と体の支配者になろう
人は何をしに生まれてくるのか
「にもかかわらず」という逆転力
もし十代に戻ったら図書館で読みたい五冊
有限だからこそ、今をしっかり生きる
母さん、生んでくれてありがとう
自分の個性を「魅せる化」しろ
成功を左右する「やりぬく力」