ヘルパーが働きやすい世の中へ
青木さんには長年温めてきた起業プランがある。発想の原点は、ヘルパーが働きやすく、また自分のような患者が重度訪問介護を受けやすい世の中にしたいという思いだ。
「誰かにお願いしないと自分の生活は成り立たない。ただでさえヘルパーさんが不足しているのに、訪問介護や難病支援となるとさらに少ない。ヘルパーさんも仕事に悩んで辞めてしまう人が多く、彼ら自身にもメンタルケアが必要だと思いました」
ヘルパーにも経験の差や、得意・不得意があり理想通りの介護が受けられないこともあるが、青木さんはこだわらない。
「基本的に生活の中で何かストレスがあるのは、自分が原因だと思っているので解決策を考えます。たとえば料理が苦手なヘルパーさんがいたら僕がレシピを伝えたり、料理の得意なヘルパーさんに多めに作ってもらって冷凍しておいたり。細かく指示されるのが嫌だと感じるヘルパーさんもいると思うので、バランスは難しいですけど」
青木さんは約二年前に同病の兄を亡くしている。兄は青木さんよりも病状が重く、施設入所も経験していたという。
「兄にもやりたいことがたくさんあったと思う。もっと楽しいことをさせてあげたかったな、もっと一緒にいたかったなと思います。兄に誇れるような社会貢献ができる人間になって、満足する人生を送って、天国で再会できたらいいなと思っています」
介護従事者との適度な距離感をつかみ、信頼関係を構築するために試行錯誤してきた自分の経験を、社会に還元したいと考えている青木さん。数年がかりで暮らしを安定させ、やりたいことを行動に移す環境が整ったと感じている。実現の日は近い。
取材・文/尾形さやか