長期滞在したおじいちゃんの正体は?
いったい泊まっていたのはどんなおじいさんだったのだろうか。『南部屋』の経営者・田村さんに話を聞いた。
「このお客様は一月下旬〜二月上旬にかけて10日間程、湯治目的でお泊まりになりました。70〜80歳前半くらいの男性のお友達同士、計3名様(それぞれ別室)、恐らく地元十和田周辺の農家さんだと思います。
地元の農家さんの中には農閑期となる冬場に、一年の疲れを癒すために湯治目的で当館に長期滞在される方は毎年珍しくなく、このお客様も、チェックインの際に自身が作ったという地元産のニンニクやゴボウ、長芋などを差し入れに持って来てくれました」(田村さん、以下同)
田村さんはそれらの食材を調理して、滞在中の食事として提供。そんなときには、今年の作物の出来具合や味の良し悪し、天気や雪の降りぐあいなどの会話を交わしたそうだ。
チェックアウトして帰るときは、「いい湯だったぁ〜!」「また来年来るからね〜」と喜んでくれていたというおじいさんたち。彼らが帰った後、田村さんが部屋に入ると、SNSでも話題になったあの光景があった。
「当館では長期滞在の場合“お客様から依頼があった場合のみ”2~3日に一度、部屋の清掃やリネン交換に入っています。
今回の3名のお客様は、『滞在中は部屋の清掃は不要』『リネン(タオルやシーツ、布団カバー、枕カバー、浴衣)の交換は3日に一度、交換したい使用済みの物を部屋前の廊下に出し、新しいリネンを部屋前に置いておいてほしい』というご希望たったので、チェックアウト後にはじめて、カスタマイズされた紐に気づいたのです」(田村さん、以下同)
長期滞在する客の中には、 “湯治目的”の他に、仕事での長期滞在というケースもある。仕事利用の人のほとんどは、八甲田・十和田湖周辺の山中での工事関係者。山中にある電力関連施設の保守・メンテナンス作業のために、数週間〜数か月単位で泊まることもあるそうだ。