「仕事中は基本的にずっと英語で接客しています」

オーバーツーリズムが引き起こす問題に対し、地元民はどう考えているのだろうか? 実際に現地を訪れ、取材を行なった。

野沢温泉村の最寄り駅「飯山駅」付近で観光業を営む50代女性はこう話す。

「駅の利用者のほとんどがスキーや野沢温泉目当ての外国人観光客で、日本人よりも外国人の数が圧倒的に多いです。言葉が通じず、意思疎通が図れないことにいつも苦労しています。日本語を話す私たちのほうが少数派に感じるくらいです。この歳にして英会話教室に通うことも考えています」

長年、野沢温泉村の観光業に携わる60代女性も、仕事をする上で「英語は必須」だと語った。

「お客さんのほとんどが外国人だから仕事中は基本的にずっと英語で接客していて、日本語はあまり使いません。中国や台湾、東南アジアからのお客さんも最近増えてきているので、翻訳アプリもよく使っています」

野沢温泉村の温泉街を歩く外国人観光客(撮影/集英社オンライン)
野沢温泉村の温泉街を歩く外国人観光客(撮影/集英社オンライン)

野沢温泉村に古くからある土産屋を営む70代男性は、お客さんの約7割が外国人観光客だと話した。

「この歳で英語を聞き取るのはすごく大変ですが、英語が話せなかったら商売上がったりなので毎日必死ですよ。カタコトでも日本語を話そうと努力する観光客や、翻訳機を使ってくれる観光客には好感を持てますが、『英語が理解できて当然だろ』というような態度の外国人には正直、イラッとしますね。

それでも、我々世代はスキーバブル崩壊を経験しているので、贅沢なことは言えないんですよ。客足が戻ってきているだけでありがたい」

野沢温泉村では、1990年のバブル経済崩壊とともにスキーブームが終焉し、スキー場来場者数が減少。スキー場は赤字経営へと転落し、ついにはシーズンあたり3億円、累計19億7千万円もの赤字を出す状況へと陥った。

しかし、2007年にはインバウンド振興のための協会が設立され、その後10年間でインバウンドの宿泊客は約10倍に増えた。

野沢温泉村の温泉街を歩く外国人観光客(撮影/集英社オンライン)
野沢温泉村の温泉街を歩く外国人観光客(撮影/集英社オンライン)

野沢温泉村の観光業に古くから携わる60代男性もこう語る。

「長野県では1998年にオリンピックが開催され、野沢温泉村でも昔からスキーの国際大会が開かれているんです。だから、地元民は外国人に寛容な人が多く、60代70代でも英語が話せる人はたくさんいます。

ただ、外国人観光客が体調不良や怪我で救急車を呼んだとき、救急隊員の方は英語が話せないことが多く、意思疎通ができなくて困ることもあると聞きます」