大使館は「元夫の同意がないとダメだから」
離婚時には、子どもの養育はA子さんとDが平等に負担する代わりにDは養育費を支払わなくてもいいという条件になったという。だが2人の子育てはA子さんが一人で担う形になり、ハンガリー語ができないという厳しい条件の中、週に三回、ハウスキーピングの仕事に出ていたという。
Dは時々オランダから子どもに会いに来るだけなのにA子さんが子を連れて日本へ帰ることを許さなかった。
「子どもの3か国のパスポートはすべてDが取り上げていました。それでA子さんはパテント協会の支援を受け、児童相談所のような機能を持つガーディアンシップ・オーソリティー(GO)に、子を日本へ連れ帰る承認を求める申し立てを2023年8月にしています」(鈴木議員)
GOの審理は時間がかかり、2024年8月ごろにようやくA子さんが望む裁定が出る見通しになった。ここでDは新たな攻撃を始める。
「A子さんのパソコンが盗まれたんです。それで8月上旬に何人かで彼女に『(Dが)何をやらかすかわからない』『早く逃げた方がいいよ』と言い、大使館に子どものパスポートを緊急に出すよう頼みなさいと促したんです。でも、2週間ほどしてもう一度集まって結果を聞くと、A子さんは『元夫の同意がないとダメだから、って言われたんだよね』と言うんです。
首を絞められたことを伝えたの?って質すと『首を絞められたことも警察へ行ってることも全部言ってる』って。
それでも、緊急だからパスポートは(誰かに)盗まれたとか嘘をついててでも発給申請しよう、と提案したんです。でも彼女は『大使館には何回も何回も電話をかけて、向こうは私の名前も声も状況も全部知っているので嘘をついてもばれるからできない』と断りました。彼女は大使館に絶望していました」(Bさん)
「この相談に関し大使館は2月10日の取材に、「24年夏くらいにお子様の旅券発給についての相談を受けています。その際には未成年者の旅券発給には共同親権者である元配偶者の同意が必要であると説明しています。その後お子様の旅券申請は当館にはなされていません」と答えている。
また、この問題を取り上げた2月14日の国会質疑でも政府側は、A子さんからの相談は2022年6月と24年8月の2回だったと説明し、「何回も何回も」電話を掛けたという本人の生前の話とは大きな隔たりがある。
だが、大使館の対応に対して浮かぶ疑問はこれだけではない。DがA子さんに先回りして日本政府に対し、子どもたちにパスポートを出すなと要求し、その事実を大使館がA子さんに伝えていなかった疑惑が今回の証言から新たに浮かんだのだ。
これが事実なら、A子さんは理由を知らされないままパスポートの発給を拒まれていたことになる。(♯3に続く)」
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班