「そうそう、この前強盗が来たんですよ(笑)」

年末年始といえば、買取業はいろんなエピソードが起こりがち。東京・新宿で店舗を構える「ブランド王ロイヤル」でもご多分に漏れず、さまざまな悲喜こもごもがあったと森田社長は話す。

森田氏(以下同)「いつもは買取7割、購入3割くらいなんですが、年末は9割1割くらいになりますね。

少し前まではとにかくド派手な金無垢なんかのロレックスが人気で、国内外から『ないですか?』って問い合わせがよくあったものなんだけど、今は反対。

あんまり派手すぎると恥ずかしいという流れになったのと、中国が不景気になったでしょう。売りに来る人の方が多くなっていますね」

故郷への帰省、親族へのお年玉、年末年始の大セールや福袋。年の瀬は何かと物入りだ。そんな年末の忙しさに紛れて、“怪しい人”が売りに来ることもあるという。

「例えば『もらった』と言い張って、ギャランティーカードがないケース。

うちは偽物はすぐ見抜いちゃうし、ギャランティーカードがないものはまず買い取りません。『申し訳ないのですが、うちでは規定で買い取らないようにしているんです…』とお引き取り願っています。

『イタリアに20年住んでいた』と言って、GUCCIの偽物を大量に持ってきた人間もいましたね。普通の人は騙せるかもしれませんが、新宿で40年近く鑑定をしている私には、かないませんよ。今話題のスーパーコピーも、すぐに見抜けますから。

また、天然ダイヤだと思って合成ダイヤを買わされていて、それを売りに来た人もいました。

そういうときに『これ合成で、ほとんど価値がないですよ』と伝えるのはちょっと辛いですけどね。宝石類は、いくらブランド品でも買ったときよりは価値が下がりますね」

そんなブランド品の中で、「買ったときより値段がつくのは、CHANELやHERMES、ROLEXくらいなんです」と社長は話す。特にHERMESは、昔のもので保存状態がよければすごい金額になるんだとか。

ブランド品の買取話に花が咲き始めた頃、社長は思い出したかのように、強盗事件について話を始めた。

「そうそう、この前強盗が来たんですよ(笑)。私からすれば顔に”強盗です”と書いてあるような、わかりやすい3人組だったんですけど。

店の前に車を止めて、当初3人で入ってきたんですね。店内の商品を見て、2人は出ていき、車に戻ったんです。

残った1人がカタコトで、ショーウインドーを指さして『この時計を直接見せてくれ』『はめさせてくれ』といい出したんです。『買うから、触らせてくれ』と。

これってよくある、時計をはめたらそのまま飛び出して、待っている車に乗って逃げる、という手口ですからね。

本当に購入する気があるんだったら、3人とも店に残って、座ってじっくり見るはず。

ですから私は『えー、私アルバイトなんで、勝手にショーケースを開けられないんです。ごめんなさい〜』って(笑)。結局無理だと悟ったのか、あきれたという顔をして出ていきましたけどね」