日本はメジャーを支えるマイナーリーグになった

選手の立場になれば、アメリカはおいしい職場である。私も生涯プロ野球一筋で、サラリーマンの経験はない。現役時代の短いプロ野球選手が引退後の長い余生を考えれば、少しでもいい条件の球団に移りたいのはよくわかる。

マスコミでは「いまよりもっと成長させてくれる舞台」とか、「世界一の野球に挑戦してみたい」とかいう選手の夢や希望の言葉があふれている。しかし、こんなきれいごとだけが大リーグを目指す動機だろうか。その本音に、大リーグの球団が提示する日本とはケタ外れの複数年・高額条件の魅力がないとはいえないだろう。

まして「10年総額1015億円」のほとんどが「10年契約終了後の後払い」という大谷とドジャースの仰天契約が象徴するプロ野球の日米格差が、引退後の野球年金もない日本人選手の夢をかき立てていないはずがない。

だが、ドルで頬をひっぱたかれて人気選手を次々に引き抜かれる日本の野球はどうなるのか。たしかにカネは大事だが、取引は選手も日本の野球界も、どちらも平等で幸せにならなければおかしいだろう。

選手のためにはいい条件でも、常に日本野球の将来を考えてきた私の立場から言えば、毎年日本の優秀な選手がポスティングでメジャーに引き抜かれる現状にはがまんができない。いまに始まったことではないが、これでは日本のプロ野球はどうなるのか。球界を代表するような優秀な選手が毎年、高額の条件で渡米するようでは、日本のプロ野球はアメリカのマイナーリーグ、3Aになってしまうだろう。

いや、もうすでにそうなっている。

写真/shutterstock
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広岡達朗
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