日本での公演、DVD発売は?

韓国で上演されたミュージカルの『ベルサイユのばら』
韓国で上演されたミュージカルの『ベルサイユのばら』
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この感動をみんなと共有したい。日本での公演は未定のようなので「DVDは発売しないのか?」と問い合わせたら、「まだまだ修正中なので、完璧なものができたら発売します」とのこと。あんなにグレードが高いのにまだブラッシュアップするのか。先のインタビューで、キム氏は「世界中で上演される作品を目指す」と語っている。

折しも9月で終わった朝ドラ『虎に翼』は、これでもかと言うぐらい法の下での自由と平等を訴えていた。戦う寅子を毎朝観ながら、不本意な状況に甘んじていた新入社員の頃の自分を思い出し「もっと怒っておけばよかった」と、後悔しきりだった。

50年前にすでに『ベルサイユのばら』では、そのテーマを取り上げていたのに。震災の年、桜が満開の頃、京都で行われたトークショーで、池田理代子先生が

「連載当時、漫画は文学に比べて、一段低いものと捉えられてきました。そして、少女漫画は少年漫画に比べてさらに蔑まれてきた、私はそういう風潮をひっくり返したくて戦ってきたのです」とおっしゃるのを会場のすみっこで聞き、ふいに涙が止まらなくなったのを思い出す。

貴族の称号の勲章を軍服からちぎり捨て、自由と平等のために戦うオスカルは、やはり池田先生そのひとなのではないかと考える。

その強い思いが、年代や国や言葉の壁を乗り越えて、観る者の気持ちを鷲掴みにする物語を生み出した。今、もういちど『ベルサイユのばら』を読み返し、ミュージカルの感動を反芻している。演者が目的でミュージカルを観に来た韓国のファンも、原作を読んでくれますように。

文/有馬弥生