預貯金を抱え続けるしかない

お金が自動的に増えることはない。そして、お金が増えるのは、働いたときと、他人から略奪したときだけだ。

略奪は、3パターンだ。

①幸運に恵まれてギャンブルに勝つ

②他人をだまして奪う

③胴元になる

つまり、お金を安定して増やそうと思えば、詐欺師になるか、金融業者になるしかないのだ。いまの日本で個人が金融業者となるのは極めて難しいし、詐欺師になるのは犯罪だ。

だから、庶民は、余計な誘惑にかられることなく、じっと預貯金を抱え続けるしかないのだ。

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その意味で、私は長年の友人であり、数多くの仕事を一緒にやってきた経済ジャーナリストの荻原博子氏をいまあらためて尊敬の眼差しで見ている。

彼女は、この数十年間、「投資なんてしてはダメ。キャッシュよ」と言い続けてきた。私はそんな彼女を揶揄して、親愛の念を込め、「キャッシー荻原」と呼んできた。

1つ付け加えておくと、荻原氏は「投資のリスクを取ってはいけない」と言いながら、自分では一部の資金を株式投資に回している。それはあくまでも射幸性を楽しむための純粋なギャンブルとしてやっていることで、資産を増やす運用としてやっているわけではない。

そうした〝二刀流〟は、荻原氏の高度な専門知識と強い意志が可能にしているもので、一般の人が真似をすることは絶対にお勧めしない。

ちょっとでも投資を残していると、そこからまた「投資依存症」が広がってしまうからだ。

たとえば、アルコール依存症から脱却するためには、アルコールを完全に断つことが必要で、少しでも飲酒の習慣を残していると、そこからまた依存症が拡大してしまうのだ。

写真/shutterstock

投資依存症 こうしてあなたはババを引く
森永 卓郎
投資依存症 こうしてあなたはババを引く
2024/9/9
1,650円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4866809403
「投資とギャンブルは違うものだ」と考えている人は多いだろう。
しかし、投資の本質はギャンブル以外の何ものでもない。
老後の生活資金を、NISAを使って投資信託で運用しようとしている人は、老後の生活資金を賭けて競馬や競輪をやっているのと同じだ。投資の世界も競馬や競輪と同じで、結局はゼロサムゲームとなる。お金が自動的に増えていくことはありえないからだ。
そのことを本書で解説しよう。
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