渋谷で会ったときのワタルの気持ちとは・・・
ワタルはかなり追い込まれた状態にいた。
渋谷で会ったとき、やっぱり相談することができなかったのかな、と思う。あのときの気持ちを知りたいと手紙を書くと、ワタルから返事が届いた。
「あのときの気持ちということで、正直こんなことにならないと思っていたり、暴走族なんかの話をしたら裏切ってしまうと思っていました。まだ自分のいぜんの価値観が残っていて、相談するのはカッコ悪いと思っていたのもあると思います。
今回の事件のことは友達にも相談することができませんでした。
自分は出院後に地元に帰り、……友達の8割はしっかりと更生をして仕事をしていました。
思い通りにいかなかったりしてなげやりになったり、じぼうじきになってしまい、残り2割の方の悪いことをまだしている子と絡むことがふえていきました。……自分がこんなことをしてまで止めてしかってもくれていたのです。この子たちとは縁切りたくないです。
また、刑が10年くらいはいくだろうと思っています。お母さん、お父さんが死んでしまわないかすごく心配です」
移送されて2カ月後、ワタルの様子は・・・
移送されてから2ヵ月後の5月後半。ワタルに会いに地方の拘置所まで向かった。
ここは路面電車が走っており、見慣れない街並みだ。路面電車を乗り継ぎ、拘置所に着いた。大きな門に壁画があって貫禄ある入り口だった。
中で手続きをすませ、待っているとワタルが部屋に連れられてきた。どこの拘置所もシステムは一緒だ。面会室に来たワタルは、体が一回り大きくなった感じがした。体が引き締まり、健康的な体つきになっている。
「約束通り来たよ!」
笑顔で言うと、ワタルの顔も笑顔になった。
最近は、部屋の中で筋トレをしたり、読書をしたりしているという。拘置所で孤独になっていないかと心配していたが、この地区のNPO法人団体や「セカンドチャンス!」の仲間が面会に来てくれており、ワタルはいろいろな人に支えられていた。
不安と心配に押しつぶされていないかと思っていたが、拘置所であっても、いい人たちとつながれてよかった。
「手紙ありがとう。ワタルは文章書くのがうまいね。ワタルの気持ちがすごくわかったよ」
ワタルは少し照れた顔をしてした。
「わざわざこっちまで来ていただいてありがとうございます」
ご飯も睡眠もきちんと取れているそうだ。元気ではないが、健康的な生活が送れていてよかった。