高市氏が保守系議員の票をまとめきれてない状況が…

今回の総裁選は9人立候補の大乱立となったため、1回の投票では誰も過半数を得られず決選投票にもつれ込むのは確実視され、事前の調査から決戦に残るのは石破氏、高市氏、小泉氏の中の2人とされてきた。

そうした中、決戦で誰が残るかのパターンごとに派閥や陣営の動きを分析した資料が、報道機関や各陣営では作られていた。

そのうち1つでは、決戦が「石破氏VS高市氏」となった場合、石破氏には菅氏のグループや岸田派、小泉陣営がつく一方、高市氏には麻生派や茂木派、小林鷹之陣営がつくとされた。

ここまでは各メディアで報じられている派閥やグループの動きと合致するが、気になるのが安倍派の動向だ。

資料では安倍派の大多数が高市氏につく一方で、一部は石破派に流れると予想されていた。

もちろん、これはシミュレーションなので、その通りに議員票が動いたかは定かではない。しかし、高市氏が保守系議員の票をまとめきれてない状況が生じていることは推察される。

拍手をほとんどしなかった麻生氏(NHKより)
拍手をほとんどしなかった麻生氏(NHKより)

高市氏が議員票をまとめられるか否かは、かねてからの課題だった。

高市氏はもともと、解散するまでは安倍派であった党内の名門派閥、清和会に所属していたが2011年に脱会。

理由は翌年の自民党総裁選で、当時の派閥会長だった町村信孝氏ではなく、安倍晋三氏を応援するためで、派閥に残るのは「不義理になる」と考えてのことだった。

だが、一方で派閥に残って安倍氏を応援した議員も多数いたため、高市氏と清和会の一部議員との間には溝ができてしまった。

2021年総裁選では安倍氏が高市氏の支援に動いたが、その安倍氏は2022年に凶弾に倒れ、さらに裏金問題を受けて清和会は解散。

自身の基盤となる保守系議員の取りまとめが困難になる中、一部が石破氏に流れ、決戦では涙をのむことになった。

また、決選投票では派閥や陣営の動きから離れた浮動票も石破氏に流れたと見られている。

総裁選より先に行なわれた立憲民主党の代表選では、党内でも保守派の論客として知られる野田佳彦元首相がトップに選出され、穏健保守への支持拡大が予見された。

車から出る石破氏(撮影/村上庄吾)
車から出る石破氏(撮影/村上庄吾)

「高市氏は保守層の中でも極右からの支持が厚いため、立憲が穏健保守にウイングを伸ばした場合、自民支持層が保守強硬派のみに追いやられてしまう可能性がある。

それならば、野党支持者からの人気が高い石破氏のほうが中間層を取ることができて選挙に有利だと考えられたのではないか」と永田町関係者は分析する。