囲い込みを防ぐには

売主が囲い込みを防ぐにはどうしたら良いのだろうか。

「極論からいえば、業者がやろうとしたときに防ぎきることはできません。最初の段階でネットの情報を参考にしながら、囲い込みを行わなそうな業者を見つける必要があります。“未公開物件あり”を標榜している多くの業者は囲い込みをやっています。

不動産業者は自社で買主を見つけるまで引き延ばそうとするので、内覧依頼が来たら業者にその結果を頻繁に尋ね、その結果に対して自分で判断する必要があります。業者任せではダメです。他の不動産業者を通じて、自分が売りに出している物件の内覧依頼を出してみて確認するのも有効な手段です。それで断られれば、囲い込みをされていることになります。」(深谷社長)

専任媒介契約の場合、売主は登録証明書に記載されているURLとIDをもとにレインズでの登録情報を確認することができる。頻繁に確認することも重要だという。

「取引状況が『公開中』以外になっていないか確認しておく必要があります。申込みがないのに『申込みあり』になっていないかどうか。あとは『図面』がちゃんと掲載されているかどうか。図面はいわばチラシです。文字情報だけでは間取りなどの詳細を把握できないため、図面が掲載されていないと買手を媒介する不動産業者は顧客に物件を紹介しづらく、物件情報が流通しません」(渡部氏)

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図面がない物件に問い合わせてみると、『作成中』などと言ってかわされることもあるという。やはり売主は仲介業者に任せきりにせず、状況を頻繁に見ておく必要がある。そして前述の通り、国土交通省は宅地建物取引業法の通達を改正し、2025年から囲い込みが処分の対象となった。業界の詐欺的行為を防ぐ効果はあるのだろうか。

「これまでレインズの規則でしか記載のなかった囲い込みも、宅建業法の規制対象となりました。レインズに記載の取引状況が実際と異なっていれば処分の対象になり得ます。

国交省がどこまで取り締まるか次第ですが、ある業者に内覧依頼を出してかわされた際の記録を積み重ね、依頼者に問い合わせることで囲い込みの実態を明らかにすることが可能です。実際に処分が行なわれれば、囲い込みをする業者も少なくなるでしょう。ただし、より巧妙な手法が出てくるかもしれません」(深谷社長)

処分の対象になったことで囲い込みの習慣が是正されるのか、それともより高度な手段が現れてくるのか注視する必要があると深谷社長はいう。
何かとダーティなイメージのある不動産業界、悪習が是正されるまでの道のりは長そうだ。

取材・文/山口伸