アクションカメラが陳腐化したというのは本当か?
市場調査やコンサルティングを行うMordor Intelligenceの「アクションカメラ市場規模と市場規模株式分析 - 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)」によると、2024年のアクションカメラの市場規模は44億1000万ドルで、前年比15.8%の増加。2029年までに91億8000万ドルまで拡大する見込みだという。市場規模は大きく、拡大ペースも速い。
GoProは、創業者ニック・ウッドマン氏が自身のサーフィンの様子を自由に撮影できるカメラがなかったことをきっかけに開発に着手。アクションカメラの市場を切り開いた。
しかし、皮肉にもGoProはアクションカメラ市場拡大の大波に乗り遅れる結果となったのだ。
キーワードの検索需要を調べる「Googleトレンド」でGoProを検索すると、そのピークは2014年12月に訪れている。ナスダック市場に上場した2か月後だ。現在は、その1/4ほどにまで落ち込んでいる。
一方、2024年にピークに到達しているのが「Insta360」だ。
Insta360は中国のスタートアップShenzhen Arashi Vision(深圳嵐ビジョン株式会社)の360度カメラだ。2016年にiPhoneに接続するカメラを発売して成功したが、製品単体で撮影できるウェアラブルカメラへと舵を切った。
当初、Insta360は風景撮影などに強みを持っており、GoProとの差別化は図れているかのように見えた。しかし、Insta360の小型化が進み、耐久性も備えるようになると、アクションカメラとしての高い性能にも注目が集まるようになった。「Insta360 Ace Pro」はライカとレンズを共同開発するなど、映像のクオリティがGoProを各段に上回るようになる。
GoProはInsta360よりも充電時間が長いうえ、熱暴走が頻繁におこる傾向があり、炎天下の夏では使用に耐えられないことすらある。Insta360と比較すると、劣っている点が目立ちすぎるのだ。
よく、GoProの業績不振はアクションカメラ市場の低価格化と陳腐化が進んだことが要因だと報じられることがある。しかし、GoProは単なるアクションカメラの陳腐化のせいで後れを取っているとは考えにくい。
いまや日本の電気メーカーはテレビなどの主力家電分野で凋落している。これは生産技術が流出・模倣され、人件費の安いアジアメーカーが優れた製品を低価格で販売できるようになったためだ。テレビはすでに技術力で差をつけるのが難しいところまで到達しており、価格のみが勝敗を分けるポイントとなれば、今後日本メーカーが逆転するのは難しい。
しかし、GoProの凋落はこの流れとは明らかに異なる。製品力そのものが、競合に劣っているのだ。価格に見合う価値を提供できていないのである。
それに加えて、スマートフォンに搭載されるカメラの品質も向上した。特に動画撮影においては、iPhoneとGoProの画質は変わらなくなっている。クオリティの高い競合他社の製品と、消費者がすでに持っているスマートフォンに中間にGoProが位置するとすれば、購入する理由が失われているのは明らかだ。