「ウコンの力」などを教団系企業が製造していた

統一教会系企業が問題なのは、市井の人々が知らないうちに、さまざまな業態で身近に存在している点だ。彼らが手掛けるビジネス自体には問題がないかもしれない。だが、教団系企業は、この「万物復帰」を行なわせるための窓口になっている。

しかも、大多数の国民はどの会社が教団系企業であるかを知らないのだ。

典型的な例を挙げよう。

二日酔いを避けるために酒席の前などに飲む人も多く、全国のコンビニやスーパーで販売されているドリンク「ウコンの力」は、販売元はハウス食品だが、製造元は統一教会系企業の「コスモフーズ」だった。旧社名は日本メッコール。「メッコール」とは韓国の統一教会系企業一和が製造する〝麦コーラ〞とも呼ばれる清涼飲料水のことだ。

コスモフーズは、元は教団系の商社・ハッピーワールドの飲料製造部門で、分割独立して現在に至る。社長をはじめ役員の大多数が、国際合同結婚式で祝福を受けた信者だ。2万平方メートル超の広大な敷地の工場が建つのは、埼玉県児玉郡神川町(旧・神川村)。

文鮮明教祖が3度この地を訪れ、1978年には1610組が合同結婚式のための婚約式に参加した「教団の聖地」だ。「ウコンの力」は、この工場で製造されていた。

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プラズマ乳酸菌を配合したキリンHDが販売する機能性表示食品「iMUSE(イミューズ)」シリーズの「iMUSE 朝の免疫ケア」も、2022年3月の全国発売以降、コスモフーズが製造を担っていた(2023年3月出荷終了)。

なぜ、日本を代表する大手飲料メーカーの製品を、教団系企業が製造するのか。「ウコンの力」はコスモフーズが2004年から2020年までOEM(受託生産)を請け負っていたが、「週刊文春」(2022年9月8日号)によれば、ハウス食品は同社が統一教会の関連企業であることを把握していなかったという。また、キリンHDは「宗教上の理由で得意先を選定することは行っていない」という。

もちろん、ハウス食品やキリンHDが悪いわけではない。製品に問題があったわけでもない。ただ、コスモフーズが生産していた「ウコンの力」や「iMUSE 朝の免疫ケア」がヒット商品だっただけに莫大な富が教団にもたらされたのは間違いないだろう。

同社のHPによれば、事業内容は清涼飲料水製造と自動販売機による飲料水販売だ。取引先にはアサヒ飲料、キリンビバレッジ、サントリーフーズ、ダイドードリンコなど大手メーカーが並び、年商は59億円(2020年度)に上る。ところが、奇妙なことに純利益は1900万円(同年度)しか計上されていない。


資料/書籍『誰も書かなかった統一教会』より
写真/shutterstock

誰も書かなかった統一教会(集英社新書)
有田芳生
誰も書かなかった統一教会(集英社新書)
2024/5/17
1,056円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4087213140

無関心=空白の30年間が招いた安倍元首相銃撃事件から2年。闘い続けるジャーナリストが、政界への浸食、北朝鮮との関係、組織の武装化まで教団の素顔を暴く!

◆内容◆
2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会 (現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。

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