コンビニの無人化に着手していたKDDI
非上場化のカギを握るのがKDDIだ。5000億円という過去最大の投資であり、リスクを伴うものである。その一方で、狙いは不明確であるように見える。
KDDIは自社の商品やサービスをローソンで取り扱うことや、相互が持つ会員情報を連携してデータ基盤を整備すること、DX知見や技術の提供によるオペレーションの最適化などにシナジー効果を見出している。注目したいのはコンビニ無人化に向けた取り組みだ
KDDIは2023年11月22日から2024年3月末まで、兵庫県淡路市のローソンにてリモート接客を試験的に行っていた。また、2022年には「auミニッツストア 渋谷店」をオープン。デリバリーアプリmenuから注文が入ると、ロボットが商品のピッキング、袋詰めまでを行い、完全自動でローソンの飲料やデザートなどを提供する試みを行っていた。
現在、コンビニオーナーが頭を悩ませている問題が人材不足だ。
経済産業省は2019年にコンビニのオーナーに対してアンケート調査を実施している(「オーナーアンケート調査」)。その中で「売上は5年前と比べてどのように変化していますか」との質問に「減少」の単語は1571回出てきた。その一方で、「従業員は十分な数を確保できていますか」との質問に「不足」は2827回出ている。オーナーが売上減よりも、人材不足に喘いでいる様子が伺える。
ローソンの全店平均日販は55万円、セブンイレブンが69万円だ。
大きな差が生じているが、三菱商事の傘下にあるローソンは仕入れの自由度が低い。そのような中で日販を高めるのは難易度が高いはずだ。
ローソンの株主構成、コンビニオーナー全般の悩み、そしてKDDIによる非上場化を鑑みると、今後は店舗の効率的な運営に力を入れるのではないか。
ローソンの経営陣は2024年4月11日に行われた決算説明会にて、創業50周年を迎える2025年にはテックを活用した実証実験用の店舗を出店したいと語っている。
省人化に向けた店舗オペレーションの構築こそ、KDDIの本領を発揮する領域だろう。ローソンの無人化でオーナーの負担を軽減し、他社と差別化を図ることができれば加盟店の増加にも期待ができる。
ローソン株の取得にはこれだけ巨額の資金を投じていることから、再上場も視野には入っているはずだ。コンビニ業界で深刻な経営課題となっている人材不足問題を解決し、企業価値を上げようとしているのではないだろうか。
KDDIには小売のノウハウがなく、経営は引き続き三菱商事主導で行われる可能性が高い。KDDIはデジタル領域で主導権を握るだろう。