借金を巧みに活用してROEを高めたローソン 

ROEは自己資本利益率のことで、株主が出資した資金でどれだけの利益を出したのかを見る指標だ。純利益を自己資本(株主資本)で除し、パーセントで計算する。数字が大きいほど、資本を効率的に活用していることになる。投資家に好まれる指標だ。

実はこのROEには別の算出方法がある。デュポン分解と呼ばれるものだ。

ROEを純利益率、総資産回転率、財務レバレッジという3つの要素に分解する。それぞれを掛け合わせるとROEを求めることができる。要素の1つ目は利益率を高めること、2つ目は資産の効率を上げることを示しており、理解はしやすいはずだ。

3つの財務レバレッジが少々わかりづらい。これは総資産を自己資本で除したもの。借入金や社債などの他人資本をいかに効率的に活用しているかを見るものだ。数字が大きいほど、他人資本を上手く使っていることになる。

総資産500に対して自己資本100であれば、財務レバレッジは5。自己資本が250であれば2である。つまり、借入を多くすればROEを引き上げることができるのだ。ローソンの財務レバレッジは8.1と高い。三菱商事は2.6だ。2社の純利益率はほぼ同水準だが、三菱商事の総資産回転率は0.8でローソンが0.5。

今回の上場廃止によってローソンは三菱商事の連結から外れ、持分法適用会社となる。

これにより、三菱商事は総資産回転率やROA(総資産利益率)を引き上げる余地ができるというわけだ。ローソンを非連結とした後の2025年3月期のROEは10.5%と予想。前期とほとんど変わらない。会計上のメリットが際立つ結果となりそうだ。

店内製造のサンドイッチや弁当を提供する「まちかど厨房」 撮影/集英社オンライン編集部
店内製造のサンドイッチや弁当を提供する「まちかど厨房」 撮影/集英社オンライン編集部

三菱商事は2018年にコンビニ向けの弁当を製造するグルメデリカの株式をキユーピーから譲受。80%の株主となった。ローソンは中食商品がグルメデリカ、商品を三菱食品など三菱商事のグループ会社から仕入れている。共同経営という形をとる以上、この図式が崩れることもないだろう。