「ほかにも5、6軒ありますよ」

しかし、事件後動きのあった、すべての店舗の売却計画が夫妻殺害と絡んでいるのなら、売却代金を得る目的で凶行が行なれわれた可能性も出てくる。

売却の動きがあったと証言するのは、サンエイ系列の店が立ち並ぶ通称「宝島ロード」から数百メートル離れた、JR御徒町駅南口エリアの居酒屋で最も勢いがあると言われている「元祖わら屋・上野御徒町店」の原田靖弘代表だ。

「私は宝島さんとも関根容疑者とも面識はありませんが、4月24日にビジネスで宝島さんとうちの両方と付き合いのある人物から“店舗を買わないか”と話がありました。

その人が誰かは本人の事情があり言えませんが、R氏としましょう。R氏は関根容疑者を含むサンエイ社員からの依頼ではなく、サンエイの店のコンサルティングに入っている人物から依頼を受けたと言っていました。

R氏は『依頼主は急いでいるみたいなんで、1週間とか2週間で、いいと思う店があれば考えてほしい』と言い、支払いはキャッシュの振り込みで、という条件でした。私が新しい店を開くための物件を探していたことをR氏は知っていたので、まず最初に私に声をかけてくれたようです」(原田氏)

事件の時系列
事件の時系列

R氏は原田氏に、サンエイのホームページに掲載されている14店舗に加え「ほかにも5、6軒ありますよ」と話し、気に入った店ならどれでも買ってほしい、と求めたという。原田氏がいくつかの店について月々の売り上げ高などの経営データを求めると、その都度開示したという。

「全然売り上げがない店が結構ありました。さらにあのあたり(宝島ロード)は家賃が高いんです。一か月に一坪5万円、30坪の店なら150万円は家賃で持っていかれる。それを考えると、店が存続できるかどうかという厳しい数字の店が多かった。

社長が亡くなった状況で店を買うとなると、転貸借の形になり契約も複雑になります。採算ぎりぎりに見える居酒屋なら500~600万円、関根容疑者が運営していて一番売り上げがよかったイタリアンの店なら1300万円くらいが買値になるとは言いましたが、どの物件も私の経営方針とは違う立地やコンセプトで、実際に買おうとは思いませんでした」(原田氏)

 

20代の頃の関根容疑者(知人提供)
20代の頃の関根容疑者(知人提供)

サンエイは取締役として宝島夫妻と次女(20)が登録されているが、宝島夫妻が亡くなり、次女は経営にはタッチしてこなかったとみられている。このため売却方針自体が、適正な手続きを踏んでいなかった可能性があると捜査本部は見ている模様だ。