新ビジネスモデルの原動力は「漫画原作」
ここでもうひとつ注目したいのが、『沈黙の艦隊』も『ゴールデンカムイ』も漫画原作の作品であることだ。長谷川氏いわく、この2作品が映画から有料展開のドラマとして制作することができたのは、原作の力があったからだという。
「どちらも原作に多くのコアなファンがいる人気作品で、大規模な集客が見込めるコンテンツです。映画化ともなれば、コアファン以外の原作を読んではないけれど興味を持っている人も集客できますし、キャストにひかれて足を運ぶ人も出てくるため、より間口を広げることができる。
映画はドラマと違い、約2時間の上映で気軽に作品のおもしろさや世界観を味わえるメディアといえます。今回のケースは映画公開で話題性を作ることで、多くのファンを取り込めると判断したのでしょう」
こうして映画で取り込んだファンを有料配信サービスに誘導し、次なるコンテンツ拡大を図るというワケか。うまく成功すれば、映画の興行収入と配信ドラマの会員費、ダブルで稼げるビジネスモデルになりそうだ。
「ファンにとっては、続編を視聴するために有料サービスに加入しなければいけないというのは、ハードルが高いように思えます。しかし、お金をかけてコンテンツを観るという点では映画と同じ。それに有料サービスのドラマだけでコンテンツ展開するよりも映画と組み合わせたほうが、“あの映像化された作品”と知ってもらうきっかけになりやすく、メリットが大きい。
もちろん、映画の続編が有料のサブスクで配信されるのは露骨な誘導だ、といった批判的な意見もあるでしょうが、そうした声も想定済みで、課金の延長として有料サービスにファンを取り込むことが可能だと判断しているのでしょう」
なおAmazonプライム・ビデオで配信されているドラマ『沈黙の艦隊』シーズン1では、映画の内容を含みつつ、映画で描ききれなかった部分を深く掘り下げている。気軽に観たいという人には映画、さらにじっくり観たいという人にはドラマという具合に、鑑賞スタイルによってコンテンツを選択できるようになっているのも新しい試みである。