在学中一貫して男子校の環境下
以上の数値からもわかるように、東大には女性が少ないのみならず、男性の学生のなかには、在学中、同じ教室に女性がいない状態で卒業する学生がいる。たまたま理科一類の「男子クラス」に振り分けられ、そのまま男性の学生ばかりの工学部の学科に進むこともある。
理系の学部では研究室に所属するのが一般的だが、先輩である院生や指導にあたる助教、准教授、教授などの教員全員が男性ということもある。唯一そばにいる女性は、研究室の秘書というのも珍しくない。このように4年間、周囲に女性の同級生や教員がいない環境で学ぶことになる。大学院修士課程に進めば東大は6年間、博士課程なら9年間の「男子校」にもなりかねない。
むろん、男性が多いのは理系だけではない。学部で言えば、もっとも女性比率が高いのは教育学部で、45%である。文学部は28%、法学部は23%に過ぎない。「東大の女性比率が低いのは理工系の学生が多いから」という説明がなされることがあるが、理工系の女性が少ないのは必然かどうかという議論は別にして、東大ではすべての学部において男性学生の方がはるかに多いのである。
このような環境を女性学生はどのように感じているのだろうか。
2020年度「東京大学におけるダイバーシティに関する意識と実態調査」報告書には「授業やサークルなど大学内の空間で自分だけが女性ということがとても多く、それだけで孤独感や疎外感を感じます」「特に理系では女性比率が少ないために、男子学生が周囲の目を気にせずセクハラ行為を女子生徒にする場面がこれまでに何度か見受けられました」「東京大学では男性が女性の存在を顧みずに発言・行動する例が特に多いように見られます。これは大学内の男女比の偏りが慢性的な差別的発言などにつながっていると考えています」「特に前期教養学部時代、男子学生が大っぴらに女子学生の容姿や性的な事柄について品定めするような発言をしても当然に許されるような雰囲気があることに驚き、過ごしづらいと感じた。女子学生が圧倒的に少数であることがこのような雰囲気の醸成に寄与していると考える」などといった切実な声が寄せられている。
男性学生からも「全く悪意はないものの、男性がほとんどの環境であるが故に、参加者に女性がいる可能性を忘れたような話の進められ方が学生間でされることがまれにあり、もやっとする」という声がある。