過去には韓国との秘密交渉も“暴露”した北朝鮮

朝鮮中央通信が25日伝えた談話は「最近も岸田首相は異なるルートを通じ、できるだけ早く朝鮮民主主義人民共和国国務委員長(金正恩氏の国家の役職)に直接会いたいという意向をわれわれに伝えてきた」と“暴露”。

そのうえで、日朝関係で活路を開くには日本が「政治的決断」をする必要があると釘を刺し「日本が今のように、われわれの主権的権利の行使に干渉しようとし、これ以上解決すべきこともない拉致問題に依然として没頭するなら首相の(日朝関係改善)構想が人気取りにすぎないという評判を避けられなくなる」と主張した。

金正恩氏と金与正氏(共同通信社)
金正恩氏と金与正氏(共同通信社)
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大手紙外報部記者が言う。

「主体的権利の行使、とは自衛力向上のための努力、具体的には核・ミサイルの開発を指します。談話は、友好関係を築くなら、これに口出しせず拉致も問題視しない『政治的勇断』を下せと求めています」

金与正氏は2月15日にも、核・ミサイル開発を問題視せず、拉致問題を両国間の障害物としないなら「首相が平壌を訪問する日もあり得る」との談話を出している。今回の談話は、その後に岸田氏が首脳会談開催を求めてきたが日本は依然態度を変えていないとして、この姿勢を改めることを求める形になっている。

「この談話によって、日本政府は極秘の提案をぶちまけられた形になりました。談話が伝えられた直後、首相は参院予算委員会で『承知していない』ととぼけましたが、否定はしませんでした。

北朝鮮は、これまで死亡したと主張してきた拉致被害者8人に関しては『解決済み』として全く譲歩しておらず、日朝が接近しても、まずは8人以外の北朝鮮にいる邦人の一時帰国の合意などから始めるしかないと見られてきました。今の状況で本当に首脳会談を極秘提案していたとしたら、相当危うい外交ですね」(政治部記者)

岸田首相(facebookより)
岸田首相(facebookより)

さらに同記者は、北朝鮮が水面下の接触を暴露することは、対話相手に政治的打撃を与える意図を持つ可能性がある」とも指摘する。

「かつて韓国保守派の李明博政権(2008~2013年)が南北首脳会談開催の可能性を探り、秘密交渉を行いましたが、条件が合わず膠着すると北朝鮮は交渉の事実を暴露し、李明博政権が行ったとする秘密提案の内容も国営メディアで報じながら韓国を非難しました。その後、李明博政権と北朝鮮との間の首脳会談へ向けた交渉はなくなりました」(同前)

とすれば、今回北朝鮮は日本との関係改善を見限ったのか。

「談話は日本への敵意をむき出しにしているわけではなく、日本が態度を変えれば交渉は可能だとほのめかしているので、本当の意図がどこにあるのかはわかりません。気になるのは北朝鮮が最近、日本での感染症の流行を問題視し、これを理由に26日に平壌で予定されたサッカーワールドカップ2次予選の日朝戦開催を拒んだことです」(同前)