歯がなくなっても明るい未来が待っている
――ちなみにお値段はどのくらいになるのでしょうか?
費用は今のところインプラント3本分を想定していますが、全然決まっていません。ただ使用する抗体製剤はけっこう高価なので、当然費用も高くなってくるでしょう。
※インプラントは1本で、30~40万円程度かかる
――どんな患者に有効ですか?
無歯症の専門外来をやっているのですが、お子さん(先天性無歯症の患者)を連れたお母さんたちはいつも泣いています。子どもに歯がないことに対して、申し訳ないことをしたと自分を責めています。
歯が少ないことは子どもの成長、発達に影響が出ます。食事を摂る効率も悪くなります。また歯が少ないということで、すきっ歯になったり、見た目が悪くなります。子どもにとってはデリケートな問題なので、治験が始まって、どんどん薬を活用できるようになると、親子の悩みを解決する突破口になり得ます。
――大人の生活は大きく変わるでしょうか?
もちろんです。大人には28本の歯(親知らずをのぞく)があり、歯がその半数以下になると、ごはんのようなやわらかい食べ物も噛めなくなります。そうなることで口腔機能が衰えてしまい、結果、認知症になりやすく、転倒が増えることが研究からわかってきています。
このような疾患を防ぐために、入れ歯や新しい自歯で失った歯を補うことが大切です。抜けても新しい自歯の登場で、歯科治療の幅が格段に広がりますし、生涯自分の歯でモノを食べることができるようになります。それはとても爽快なことなはずです。
歯が改善されれば、自然と健康寿命も延びます。まずは2030年を目処に、先天性無歯症の患者さんに薬を届けたいと思います。
取材・文/集英社オンライン編集部