【ストーリー】原作の行間を埋めるオリジナル要素

現在刊行されている原作コミックス4巻のうち、ドラマで描かれているのは原作の2巻まで。物語の流れは原作に忠実ではあるものの、ドラマでしか描かれないストーリーやキャラクターなどオリジナルの要素も取り入れられています。そのオリジナル要素こそが、ドラマの魅力を引き立てる重要なポイントなのです。

例えば、主人公チャーリーの友達でトランスジェンダーのエルというキャラクターがいるのですが、原作ではあまりスポットが当たっていません。しかし、ドラマでは彼女とチャーリーの関係性を掘り下げたり、同じくチャーリーの友達であるタオと親密になっていく過程が描かれたりします。

イギリス発の青春BL!Netflix『HEARTSTOPPER』4つの魅力_2
ドラマでは重要人物として登場する(左から)エルとタオ

ただ改変しているのではなく、原作で描かれていなかった“行間”部分を埋め、よりストーリーを深く掘り下げるための重要な要素として、オリジナルのストーリーが取り入れられているのです。そのおかげで登場キャラクターの心情やキャラクター同士の関係性の深まりが丁寧に描写されています。

オリジナル要素が違和感なく取り入れられているのは、作者のアリス・オズマンがドラマの製作総指揮と全話脚本を務めているから。作者自らが原作では描き切れていなかった部分をドラマに書き起こしたことで、原作に忠実でありながらさらに魅力を引き立たせるストーリーになった印象を受けました。

【キャラクター】再現度が高すぎる本気のキャスティング

筆者はドラマ視聴後に原作を読んだのですが、キャラクターの再現度の高さに度肝を抜かれるほど、「そのまんま!」と感じました。

調べてみて、その理由に納得。原作を忠実に再現するため、メインキャラクターであるチャーリーとニックのキャストをキャラと同世代の若者にしようとオーディションを決行。製作総指揮を取ったアリス・オズマン自らもオーディションの審査員として参加していました。

イギリス発の青春BL!Netflix『HEARTSTOPPER』4つの魅力_3

そこで選ばれたのが、ジョー・ロック(チャーリー)とキット・コナー(ニック)です。ジョー・ロックを起用したのちにニック役のオーディションをしたところ、すぐにジョー・ロックとキット・コナーは打ち解け、「最初のキスシーンを再現するというお題で化学反応を起こした」とアリス・オズマンが語っています。

また、ジョー・ロックは『HEARTSTOPPER』が俳優デビュー作となっている新人です。加えて、前述したチャーリーの友人エルはトランスジェンダーのヤスミン・フィニー、エルの友人であるレズビアンの「ダーシー」はノンバイナリーのキジー・エッジェルが演じるなど、キャラクターをより深く理解し演じられる俳優たちを起用しています(ちなみにこの2人も本作で俳優デビュー)。

ただ、話題性のある俳優を起用するのではなくキャラクターのイメージに合うまでとことん追求していく。キャスティングに対しての本気度が伺えるのと同時に、だからこその再現度の高さには納得せざるを得ません。