便もれは必ず治る

多くの人を悩ませる「便もれ」。その原因と対策は? 毎月、幅広い世代の「便もれ患者」が相談に来るという大腸・肛門外科医で排便障害を専門にした湘南慶育病院の前田耕太郎副院長に聞いた。

「『便失禁』には、知らないうちにもれる“漏出性”と、間に合わなくて漏れる“切迫性”の大きく2種類あります。便失禁の主な原因は加齢による肛門括約筋の衰え。また、痔や大腸がんなど肛門や直腸の病気、さらには糖尿病も便失禁につながることがありますし、女性の場合は分娩による肛門括約筋の損傷も大きな要因となります」

湘南慶育病院、前田耕太郎副院長
湘南慶育病院、前田耕太郎副院長

若い世代にも便失禁が多いのはなぜか。

「ストレスや自律神経の乱れによって腸の働きに異常がきたす過敏性腸症候群によるところも多いかと思います。あとは大量飲酒はアルコールが腸に吸収されて腸粘膜が荒れて腸管内で分解しづらくなって軟便となり、便失禁につながります。香辛料の多い食品でも同様ですね」

ただし、便失禁で手術までいたる人はとても少ないそうだ。

「食生活を改めて規則正しい排便習慣をつけること、お尻の穴を窄めるといった骨盤底筋訓練などによって改善できます。便を固める薬などを服用することも効果があります。

さらに、『仙骨神経刺激療法』という仙骨神経に電気刺激を送ることで肛門括約筋の動きや直腸の知覚を回復できる手術が、2014年に保険適用で導入されており、2023年3月までの9年間で、国内550例ほど実施されています」

※写真はイメージです
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前田先生いわく、「便秘に悩まされる日本人は450万人ほどで、便失禁に悩まされている人は500万人ほどいる」と言う。だからこそ、と前田先生は続ける。

「ひとりで恥ずかしらずに苦しまないでほしい。尿失禁と違って、便失禁については『私の体がおかしいのでは』と人に相談できないという人が多い。でも、これは加齢とともに誰しも起こりうること。そう伝えるとみんな明るい顔になって帰っていきます。抱え込まずに病院に来てください。必ず改善しますから」

ため息と便は漏らす前に病院へ行こう。ザコシショウもぜひ!

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班