都内のマンションの17.4%は「管理不全の兆候あり」
この出来事は全国の自治体やマンション管理関係者を震撼させた。2040年には全国のあらゆる都市に廃墟化したマンションが林立する──そんな未来予想が現実味を帯びたからだ。
国交省の調べによれば、2022年末時点で築40年以上のマンションは全国で約125.7万戸に上る。これは全マンションの20%近くにあたり、10年前の29.3万戸から4.3倍に増加した。今後も増え続け20年後には現在の約3.5倍に増加する見込みとなっており、その数は450万戸近くに迫る。
番組では、そうしたマンションが全国で今後どのように増えるかを予測する2040年時点の「〝高経年マンション〟予測マップ」を独自に作成した(図8)。すると、2040年には首都圏の8自治体で3万戸超、近畿では5自治体で2万戸超になることが判明。そのほかにも札幌市や福岡市といった県庁所在地を中心に、18の自治体で1万戸を超えるという試算結果になった。
築40年が目安になるのは、給水管や排水管などの設備の耐用年数が一般的に40年程度であることが理由の1つだ。鉄筋コンクリート造の寿命は100年ともいわれ、築40年を境にすべてのマンションが老朽化するわけではないが、建物を維持するためには長年にわたるこまめな管理や修繕が欠かせない。
ところが、築年数の古いマンションほど管理が行き届いていないのが実情だ。日本で最もマンションの戸数が多い東京都では、1983年以前に建てられたマンション約1万2000棟に対し、管理状況の届け出を義務付けている。
届け出のあった1万440棟中、「管理組合の設置/管理者(管理組合理事長等)の設置/管理規約の存在/組合総会の年1回以上の開催/管理費の徴収/修繕積立金の徴収/大規模修繕工事の計画的な実施」という7項目のうちいずれかが「ない」「いない」と回答した物件は1811棟で17.4%に上った。
こうした7項目はマンションを維持管理するための必須項目として東京都が定めたものだ。この調査で最も多く「ない」という回答が集まったのは「大規模修繕工事の計画的な実施」(11.1%)、次いで「組合総会の年1回以上の開催」(7.3%)となっている。
一般に分譲マンションでは各部屋の所有者全員で組織する管理組合があり、建物の管理運営を行う。所有者は管理費と修繕積立金を毎月支払わねばならず、前者は共用部分の光熱費やちょっとした不具合の修理費、組合の運営費などに使われ、後者は大規模修繕工事、つまり建物の躯体の補強や給排水管の補修、外壁の塗り直しなど、文字通り日頃はできない大掛かりな修繕に備えて積み立てていく。
国交省のガイドラインなどでは大規模修繕は12〜15年に一度の周期で行うことが理想とされる。にもかかわらず、東京都のマンションのうち2000棟近くが40年間で一度も実施したことがないのだ。
都ではこうしたマンションを「管理不全の兆候あり」としている。管理状況の届け出を行っていないマンションも1500棟近くあることを考慮すると、管理不全マンションはさらに多い可能性が高い。